結論から言います|胃がなくても、食べることは必ず楽しくなれます
退院直後はそう思えないかもしれません。
「少し食べただけで気持ち悪い」「また症状が出たら怖い」——そんな不安を抱えて、毎日の食事がつらくなっていませんか?
この記事では、看護師として・そして胃がんで胃を全摘した母を持つ家族として、実際に役立った食事の工夫と補助食品を正直にお伝えします。
そして、私の母も、胃がんで胃を全摘しました。
体重は15kgも落ちました。ずっと続けてきた家庭菜園の野菜を、体力がなくて収穫できなくなった日がありました。息子である私が代わりに畑に入りながら、「こんなに痩せていって大丈夫なのか」と胸が締め付けられたことを覚えています。
母は後から「毎日、鏡で自分の体を見るのが怖かった」と話してくれました。その言葉が、今も忘れられません。

それでも今、母は「今日のご飯、おいしかった」と笑顔で話してくれます。
この記事では、看護師として・そして家族として経験したことをもとに、胃全摘後の食事の工夫と、実際に役立った補助食品をご紹介します。手術後の方にも、これから手術を控えている方にも、ぜひ読んでいただきたい内容です。
手術を控えている方へ|「体の予備」が術後を支えます
少し意外に聞こえるかもしれませんが——看護師として多くの患者さんを見てきた実感として、手術前に少し肉付きのある方のほうが、術後を乗り越えやすいと感じています。
BMIで言うと、ダイエットで痩せ細った状態よりも、少し余裕のある体格の方が、術後の体重減少に耐えやすい傾向があります。これはあくまで私が現場で感じてきた実感であり、個人差もありますので、具体的な目標体重は担当医と相談してみてください。胃の手術では、どうしても食べられない時期・栄養の吸収力が落ちる時期が続きます。そのとき、体に「脂肪という予備能力」があるかどうかが、回復速度に大きく影響します。
今の時代、ダイエットして痩せた体型が理想とされることも多いですが、がん治療では「少しの余裕」が体を守ってくれます。手術を控えている方は、今のうちにしっかり食べておくことも、立派な術前準備ですよ。
食欲は、人間の生理的な欲求のひとつです。美味しいものは気力を充実させ、明日への活力につながります。その食事が毎回つらいものになってしまっては、前向きな一歩が踏み出しにくくなります。日々の食事は、人生をより豊かにするものだと私は心から信じています。
胃全摘後の体で起きていること|あなたの体はこう変わる
胃を全摘したあとの体では、食べたものがダイレクトに小腸へ送られるようになります。つまり、「前菜抜きでいきなりメインディッシュに突入」みたいな状態。小腸もびっくりです。
1. 食後すぐの不調(ダンピング症候群)
食べ物が急に小腸に流れ込むことで、めまい・動悸・冷や汗・腹痛・下痢などが起きることがあります。これは「ダンピング症候群」と呼ばれ、胃全摘後の方に多くみられる症状です。「また起きたらどうしよう」という恐怖が、食事への不安をさらに大きくしてしまいます。
2. 消化酵素や胃酸が激減 → 栄養の吸収力ダウン
胃には、「食べ物をこねて、消化液とまぜて、小腸に送り出す」という大事な仕事がありました。それがなくなると、特に脂肪やたんぱく質の分解・吸収がうまくいかず、便に脂が浮いたり(脂肪便)、下痢になりやすくなります。ビタミンB12・鉄・ビタミンDなどの吸収も低下するため、定期的な血液検査が重要です。
間違えやすいんだけど、胃には栄養の吸収能力はありません。「こねて・混ぜて・送る」ミキサー車みたいなものですね!
3. 食事量が減る → 体重減少・筋肉の低下
満腹感を感じやすくなるため、一度に食べられる量が激減します。すると、栄養不足からやせ細ったり、筋肉が減ってフレイル状態になるリスクも…。
フレイルとは、年齢や病気によって筋肉や体力が落ち、心身の機能が弱くなっている状態のことです。放っておくと寝たきりや介護が必要になるリスクが高まります。
4. 肝臓に負担がかかり、肝機能の数値が悪化することも
脂肪の代謝が乱れやすくなり、脂肪肝や肝機能障害(AST・ALT上昇)が起こるケースもあります。特に、脂質が多い食事や糖質のとりすぎには注意が必要です。

私の母もそうですが、体重は15㎏ほど落ちてしまいました。
なかなか食事量が増えないのが現実です。だからこそ「分食」と「補助食品」の組み合わせが、体を支える重要な戦略になります。
無理せず続ける!胃全摘後の食事の5つのコツ
1. 少量をこまめに|1日5〜6回の分食がおすすめ
1回の食事量はお茶碗半分〜1杯程度に抑えて、朝昼晩+間食を2〜3回に分けてみてください。「3時間おきに軽く食べる」くらいの感覚でOKです。「食事」と気負わず、「おやつタイム」を食事に組み込む感覚が長続きのコツです。
2. よく噛む=消化のサポートになる
1口あたり30回以上噛むことを意識。噛むことで唾液と混ざり、消化酵素が働きやすくなります。柔らかめの食事でも「噛む意識」をもつだけで消化が楽になります。
3. 油は控えめ&”良い油”を少しだけ
揚げ物・バター・ラードは控えめに。ごま油・オリーブオイル・青魚の脂(DHA/EPA)など、良質な脂を”ちょこっと”取り入れましょう。肝機能が心配な方は特に脂質の多い食品に注意が必要です。
4. 血糖値の急上昇を防ぐ食べ方・選び方を意識
白米よりも雑穀米や玄米を少しずつ。甘いものは間食の時間に”少量だけ”。低GI食品を意識して、血糖値の急上昇=ダンピングを防ぎましょう。
5. ビタミン・ミネラルは”意識して”補う
ビタミンB12、鉄、ビタミンD、亜鉛などは特に吸収されにくくなります。血液検査で不足があれば、医師の指示で注射やサプリも活用を。

“胃がないから…”とあきらめなくても大丈夫。体にやさしい食べ方を身につけていけば、また“食べることが楽しい”と思える時間が戻ってきますよ。
実際に助かった補助食品|母と私が選んだものを正直に紹介します
「少しずつ、何回かに分けて食べるのが大事」と言われても、毎回食事を準備するのは大変ですよね。そんなときに役立つのが補助食品です。ここでは、母が実際に使って「よかった」と感じたものを中心に、看護師目線で正直にご紹介します。
1. カロリーメイト(ブロックタイプ)★ 一番のおすすめ
母が分食で最も頼ったのが、これでした。1本100kcal前後でエネルギー&ビタミンを補給でき、個包装でどこでも取り出せる手軽さが最大の魅力です。「お菓子を食べている感覚」で食べられるため、食事へのハードルが自然と下がりました。
- 個包装で取り出しやすく、鞄にも入る
- 栄養バランスが計算されていて安心感がある
- 脂質がやや多めなので1回1〜2本が目安
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2. ハーゲンダッツ(アイスクリーム)★ 番外編・切り札
「お菓子をすすめるの?」と思うかもしれませんが、本物のアイスクリーム(乳脂肪分が高いもの)はエネルギー補給に実はとても優秀です。口当たりがよく、食欲がない日でもするっと食べられると母はよく言っていました。
- 口当たりがよく食欲ゼロの日でも食べやすい
- 乳脂肪・乳たんぱくでエネルギーと栄養を補給
- ちょっとお高いのが難点だが、冷凍庫の「切り札」に
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ジェラートや乳脂肪の少ないアイスより、ハーゲンダッツのような「本物のアイスクリーム」のほうが栄養価は高いです。食べられない日の贅沢として、ぜひ冷凍庫に常備してみてください。
3. inゼリー(エネルギータイプ)
「今日は何も食べられない…」そんな日の救世主。ストロー付きで飲みやすく、短時間でエネルギー補給できます。母もよく利用していました。
- ストロー付きで体が辛い日でも飲みやすい
- エネルギータイプ・たんぱくタイプなど目的別に選べる
- 糖質が多いタイプは避け、成分を確認して選びましょう
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4. 明治 メイバランスMiniカップ
少量(125ml)で200kcal+たんぱく質・ビタミン・ミネラルが補える栄養補助飲料。飲みきりサイズで分食にぴったりです。
- 冷やすと飲みやすく、味も豊富
- 肝機能が心配な方は低脂肪タイプ(メイバランスjArg Miniなど)がおすすめ
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5. オイコス(高たんぱくヨーグルト)
デザート感覚で食べられ、たんぱく質が10g以上とれる優秀アイテム。低脂肪タイプなら肝臓にもやさしく、間食や朝食の一部に加えるだけで栄養アップにつながります。
- 低脂肪タイプを選べば肝臓にもやさしい
- 間食や朝食の一部に加えて栄養アップ
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6. 雑炊・冷製スープ(レトルト)
温めるだけで食べられる、やさしい主食系食品。和風だし・味噌味など軽めの味がおすすめです。
- 和風だし・味噌味などの軽めの味がおすすめ
- 脂っこい具材のスープは避けましょう
🍱 管理栄養士監修の健康宅配食もおすすめ
7. SOYJOY(ソイジョイ)
大豆たんぱくベースで低GI。ダンピング予防にも◎ フルーツ系やナッツ系の味が選べます。
- フルーツ系やナッツ系の味が選べる
- 脂質が多い「ピーナッツ味」は量に注意
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サラダチキンは高たんぱく・低脂肪で栄養的には優秀なのですが、母は「少し硬くて食べにくかった」と言っていました。もし使うなら、おかゆや雑炊に細かく裂いて混ぜると食べやすくなりますよ。

たくさん食べられないからこそ、“1回1回の食事で無理なく補う”ことが大切です。市販の補助食品も、使い方次第で立派な栄養源になりますよ。
迷ったときは「低脂肪・低糖質・高たんぱく」がポイントです。
さいごに|「食べること」を、もう一度あなたの味方に
胃を失ってから、あなたはきっと、たくさんのことを我慢してきたと思います。「またダンピングになったらどうしよう…」「何を食べてもおいしく感じない…」 そんな不安やつらさを、私も患者さんから何度も聞いてきました。
でも、食べることは“人生を味わうこと”でもあります。一度にたくさん食べられなくても、少しずつ、自分のペースで、また「美味しい」と感じられる瞬間が必ず戻ってきます。
母がある日、「今日のご飯、おいしかった」と笑顔で言えた瞬間のことを、今でも鮮明に覚えています。胃を失っても、その言葉は取り戻せます。

この記事が、あなたが食事と向き合ううえでの小さなヒントや励ましになれば嬉しいです。そしてこれからも、あなたの暮らしと体に寄り添う情報を発信していきますので、またぜひ読みにきてくださいね。
🍀食事や栄養に関する記事はこちらが参考になります。






