がん治療中こそタンパク質が大切な理由|看護師・がんサバイバーが実体験とともに解説

この記事を書いた人:くるみん

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📋 この記事でわかること

  • がん治療中に体重・筋肉が落ちる本当の理由(がん悪液質とは)
  • 治療中に必要なタンパク質の量(数字で確認)
  • 食べられないときの現実的な食品・工夫
  • 栄養補助食品の選び方(処方品と市販品の違い)
  • 看護師×がんサバイバーとしての実体験

🩺 はじめに

「治療中なのに、なぜこんなに体重が落ちるんだろう」——そう感じているあなたへ。

その体重減少、実は食べられないからだけではないかもしれません。

この記事では、看護師としての知識と、父をがんで看取り自身もがんサバイバーとなった体験をもとに、治療中にタンパク質を意識すべき理由をわかりやすくお伝えします。

① 結論:がん治療中こそ、タンパク質を意識してほしい

💡 最初に結論をお伝えします

がん治療中は、健康な人よりも多くのタンパク質が必要です。その理由は「食欲がない=栄養が足りない」という単純な問題だけでなく、がんそのものが体の筋肉を分解するメカニズムを持っているからです。

② なぜがん治療中に体重・筋肉が落ちるのか

ダイエットとがんの体重減少は何が違うのか

ダイエットで体重が落ちるとき、体の中では次のことが起きています。

食事量が減る

脂肪をエネルギーとして使う

それでも足りないと筋肉を分解してブドウ糖を作る(糖新生)

筋肉量が減少する

これはがん患者さんの体でも同様に起きています。しかし、がんにはさらに厄介なメカニズムがあります。

がん細胞は「炎症性サイトカイン」と呼ばれる物質(TNF-α・IL-6など)を放出します。この物質が全身に慢性的な炎症を引き起こし、食事をとっていても筋肉が分解されてしまうのです。

これをがん悪液質(カヘキシア)といいます。

🚨 ダイエットとがん悪液質の最大の違い

ダイエットの体重減少は「食べれば戻せる」。しかしがん悪液質は「食べているのに筋肉が落ちる」——これが最大の違いです。

私の父が教えてくれたこと

 父は肺がん(悪性中皮腫)で74歳のときに亡くなりました。診断されたとき、父の体重は98kgありました。長年の力仕事で培った筋肉と、それなりの脂肪を持った、体格のいい父でした。

 しかし治療が始まり、病状が進行していくにつれて体重はみるみる落ちていきました。最終的には64kgまで——約1年で30kg以上の体重減少です。

 食が細くなっていったのは確かです。でもそれ以上のスピードで体重が落ちていく姿を目の当たりにして、私は不思議でなりませんでした。

「悪性腫瘍って、本当に体の養分を奪っていくんだ。」

 看護師として頭では知っていたはずのがん悪液質を、父の姿を通じて初めて心で理解した気がします。十分に看病してあげられなかったことは、今でも悔やまれます。

③ 化学療法が追い打ちをかける

抗がん剤治療の副作用として多くの方が経験されるのが

  • 🤢 悪心・嘔吐(吐き気)
  • 😣 口内炎
  • 😔 食欲不振
  • 👅 味覚の変化

これらによって「食べたくても食べられない」状況が重なります。食べられない日が続くと、体はどんどん筋肉を分解してエネルギーを確保しようとします。この悪循環を少しでも断ち切るために、タンパク質の意識的な摂取が重要になってきます。

④ 治療中に必要なタンパク質の量

状態 体重1kgあたりの推奨量 体重60kgの場合
健康な成人 0.8g 約48g
がん治療中 1.2〜1.5g 約72〜90g

⚠️ 注意:腎機能の低下がある方は摂取量の制限が必要な場合があります。必ず主治医・管理栄養士にご相談ください。

⑤ 食べられないときの現実的なタンパク質の摂り方

少量でタンパク質を摂れる食品

食品 目安量 タンパク質量
🥚 卵 1個(60g) 約7g
🫙 豆腐(絹ごし) 半丁(150g) 約8g
🫘 納豆 1パック(45g) 約7g
🥛 ギリシャヨーグルト 1個(100g) 約10g
🍗 サラダチキン 1袋(100g) 約25g

吐き気があるときのコツ

  • ❄️ 冷たいもの・常温のものから試す —— 温かい食べ物は匂いが立ちやすい
  • 🍽️ 少量を何回かに分けて食べる —— 一度に食べようとしない
  • 「食事らしい食事」にこだわらない —— 飲めるもの、食べられるものを優先

⑥ 私自身の体験から——「看護師なのに知らなかった」

幸い私は尿管がんで右腎臓を摘出しましたが、消化管の手術ではなかったため、術後の早い段階から食事ができました。そのとき頭にあったのは、ひとつのことだけでした。

「手術の傷を、早く治したい。」

腹筋にメスが入り、術後は痛みで体を動かすことができず、みるみる筋力が落ちていくのを感じました。看護師のくせに、術後の栄養と体のリカバリーについてまったく意識できていなかったのです。

退院後、ネットで調べて初めて知りました。豆腐、納豆、鶏肉——タンパク質が傷の回復にも筋肉の維持にも重要だということを。

「看護師なのに、自分のこととなると何も知らなかった。」

そのとき初めて、タンパク質の重要性を頭ではなく体で理解しました。

⑦ 食べられないときの強い味方——栄養補助食品

どうしても食事がとれないとき、栄養補助食品という選択肢があります。

「食事の代わりに使うのは負けた気がする」——

使えるものは全部使っていい。
それが治療を乗り越えるための戦略です。

【病院で処方してもらえるもの】

商品名 特徴
エンシュアリキッド 1缶250mlで250kcal。タンパク質・ビタミン・ミネラルをバランスよく補給できる経腸栄養剤の代表格。薬局での取り寄せ購入も可能(処方箋不要)
エンシュアH エンシュアリキッドの約1.5倍のカロリー。少量でより多くのエネルギーを摂りたいときに
ラコール・イノラス 消化器症状がある方にも使いやすいタイプ。医師に相談を

⚠️ これらは医薬品のため、AmazonやYahooショッピングなどの通販では現状購入できません。

【自分で手軽に買えるもの】

商品名 メーカー 特徴
メイバランスMini 明治 125mlで200kcal。フレーバーが豊富で飲みやすいと口コミでも評判
エンジョイクリミール 森永 高カロリー設計で少量でもしっかり栄養補給できる
アイソカル100 ネスレ 100mlのコンパクトサイズ。持ち運びにも便利
カロリーメイト 大塚製薬 ゼリー・液体・固形と形態が選べる。吐き気の状態で使い分けができる

👩‍⚕️ 私のおすすめ

吐き気がつらい日は冷やして飲むと格段に飲みやすくなります。エンシュアリキッドをシャーベット状に凍らせる方法も、現場で患者さんに喜ばれた工夫のひとつです。

📌 まとめ

  • がん治療中の体重・筋肉減少は、単なる食欲不振だけでなくがん悪液質という特有のメカニズムが関係している
  • 治療中のタンパク質推奨量は体重×1.2〜1.5gと、健康な人より多め
  • 食べられないときは少量・冷たい・飲める形態を活用する
  • 栄養補助食品は処方品と市販品の2種類があり、状況に合わせて選べる
  • 「食事らしい食事」にこだわらなくていい——使えるものを使うことが治療を支える

🤝 最後に

この記事があなたの療養生活の小さな支えになれば、
看護師として、そしてがんサバイバーとして、これ以上嬉しいことはありません。

【免責事項】

本記事は看護師としての知識および個人の体験に基づく情報提供です。医療行為・診断・治療の代替となるものではありません。タンパク質摂取量や栄養補助食品の選択については、必ず担当医師・管理栄養士にご相談ください。記事内の内容はあくまで個人の見解です。

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