がん治療は25年でここまで進化した|訪問看護師が母の闘病を通して感じたこと

この記事を書いた人:くるみん

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こんな方に読んでほしい記事です

  • がんと診断されて、先が不安な方
  • 治療中で「もうやめたい」と思っている方
  • 家族ががんで、どう支えたらいいかわからない方
  • 標準治療への不安を感じている方

はじめに——「死」という言葉が頭をよぎったあの日のこと

目の前が真っ暗になる不安——がんと診断された瞬間

私は26年間、訪問看護師として多くのがん患者さんと向き合ってきました。

患者さんが「がん」と診断されたとき、その表情は忘れられません。目の前が真っ暗になったような顔。言葉を失ったまま、ただうなずくだけの姿。

そしてその気持ちは、私自身も——母が腎臓がんと診断されたとき——初めてリアルに理解しました。

でも今日、私がこの記事で伝えたいのは一つのことだけです。

がん治療は、確実に、前に進んでいます。

25年前のがん治療:「切る」か「点滴」か

25年前のがん治療の選択肢

私が25歳で看護師になったころ、外科病棟で目の当たりにしたがん治療はシンプルでした。

選択肢は3つのみ。

  • 手術療法(切除)
  • 化学療法(抗がん剤)
  • 放射線治療

当時は「切ってなんぼ」という空気が漂う外科病棟で、手術できるがんはまず手術。手術ができない場合は、化学療法を続けるしかありませんでした。

患者さんたちは点滴を信じて最後まで続けました。でも多くの方が、口内炎で食べられなくなり、みるみるやせ細り、元気だった頃の面影を失って、病院のベッドで最期を迎えていきました。

それが25年前の現実でした。

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2025年のがん治療:選択肢が劇的に広がった

諦めるのは早い——がん治療の最前線2025

今、がん治療の世界は大きく変わっています。

① 分子標的治療薬

がん細胞の特定の「弱点(遺伝子変異)」を狙い打ちにする薬です。正常な細胞には影響を与えにくく、従来の抗がん剤より副作用が少ない薬も多くなっています。

② 免疫チェックポイント阻害薬(キイトルーダ・オプジーボなど)

分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬の進化

私たちの体には、もともとがん細胞を攻撃する免疫力があります。しかしがん細胞は、免疫の「ブレーキ(PD-1/PD-L1経路など)」を巧みに踏んで、攻撃から逃げ続けます。

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)やオプジーボ(ニボルマブ)は、このブレーキを解除して、自分の免疫細胞の力でがんを攻撃させる薬です。腎細胞がん、肺がん、メラノーマ、直腸がんなど、多くのがん種で保険適用になっています。

③ がんゲノム医療(がん遺伝子パネル検査)

がんゲノム医療——あなたのがんに効く薬を探す

最も新しい流れのひとつが、このがんゲノム医療です。

患者さんのがん細胞の遺伝子を丸ごと解析して、「あなたのがんにはどの薬が効くか」を個別に探る医療です。日本では2019年から保険適用となり、現在は全国277か所以上の拠点病院で受けられます。

従来の治療では効果が出にくかった方にも、新たな治療の選択肢が見つかる可能性があります。

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私の母の話——78歳で「もう治療はいい」と言った日

もう治療はいい——78歳の母が言った日

少し個人的な話をさせてください。

私の母は現在78歳。腎臓がんがあり、直腸への転移で手術も経験しました。

診断後、母はこう言いました。

「もうこれ以上、治療はしなくていい。」

その言葉を聞いたとき、私は胸が痛かった。でも、わかる気もしました。年齢のこと、手術の疲れ、先が見えない不安——全部重なったら、そう感じてしまうのは自然なことです。

でも私は、看護師として長男として、どうしても一つのことを伝えたかった。

「今はキイトルーダという選択肢がある。これは腎臓がんにも効果があって、やる価値があると思う。一緒に考えよう。」

何度も話し合い、母はようやく治療を始めることを選んでくれました。

そして今——大きな副作用もなく、がんが再発することなく、母は78歳の日常を送っています。

あのとき、情報を届けて、選択肢を一緒に考えた。それが正解だったと、今も確信しています。

緩和ケアも、こんなに進んでいる

痛みへの恐怖——緩和ケアは25年でここまで進化した

「がんの最期は痛みが怖い」——そう思っている方に、ぜひ知ってほしいことがあります。

緩和ケアも、この25年で大きく進化しました。

私が新人の頃、医療用麻薬といえば「持続点滴のみ」でした。病院でしか扱えない、専門的な管理が必要なものでした。

今は違います。

  • 飲み薬(内服麻薬)
  • 貼り薬(フェンタニルパッチ)
  • 座薬
  • 携帯型の持続注入ポンプ

投与方法が大きく広がったことで、在宅でも痛みをコントロールできるようになりました。「最期は自宅で迎えたい」という患者さんの願いに、医療が追いついてきたのです。

また、ご家族へのサポートや心理的なケアも、病院・在宅ともに以前とは比べ物にならないほど充実しています。

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標準治療は、最高の治療です

標準治療は最高の治療——エビデンスに基づく選択

がんになると、インターネットや知人からさまざまな情報が入ってきます。民間療法、高額なサプリメント、自費の免疫療法……。

その気持ちはよくわかります。少しでも可能性があるなら試したくなるのが、人間というものです。

でも、私はここで看護師として、はっきりお伝えしたい。

標準治療は、最高の治療です。

「標準」という言葉から、「ありきたりな治療」をイメージする方もいるかもしれません。でも実際は違います。

標準治療とは、世界中の膨大な臨床試験のデータをもとに、今この瞬間に最も効果が証明されている治療のことです。それが標準治療です。

ステージを調べ、5年生存率を何度も確認し、検査結果に一喜一憂する。そんな毎日を送っているがんサバイバーのみなさん——私も家族として、同じ経験をしてきました。

それでも言えるのは、医療は確実に前に進んでいるということ。

あなたが今受けている標準治療は、今この時代の、最善の選択肢です。

まとめ:がん治療の進化、5つのポイント

25年前と2025年のがん治療比較
項目 25年前 2025年
治療の選択肢 手術・化学療法・放射線の3択 分子標的薬・免疫療法・ゲノム医療なども加わり多彩に
免疫療法 ほぼなし キイトルーダ・オプジーボ等が多くのがん種で保険適用
個別化医療 なし がんゲノム医療(遺伝子パネル検査)が保険適用
緩和ケア 病院での持続点滴が中心 飲み薬・貼り薬など多様な方法で在宅でも対応可能
最期の場所 病院が大多数 在宅での看取りも十分に支援できる体制

おわりに

立ち止まらない医療——あなたの隣で進化し続ける

がんという診断を受けたとき、世界が止まったように感じるかもしれません。

でも、あなたの周りの医療は止まっていません。25年前より、確実に豊かになっています。

落ち込まず、前を向いて。

今日の医療を信じて、一歩ずつ進んでいってほしい——看護師として、同じ家族の立場として、そう願っています。

くるみん
訪問看護師26年/がんサバイバー・患者家族を応援するブログ「くるみんのがん羅針盤」運営
X(旧Twitter): @NurseFightsBack

※この記事の情報は2025年5月時点のものです。治療法の詳細については、担当医にご相談ください。

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