がん入院中・時間の潰し方10選|看護師・がんサバイバーが実体験から伝える「病院の過ごし方」

この記事を書いた人:くるみん

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26年間、訪問看護師として働いてきた私は、多くの患者さんの入院生活に寄り添ってきました。そして自分自身も、尿管がん・膀胱がんのサバイバーとして入院を経験しました。

入院中の時間って、不思議なんです。

時計を見ると、まだ10時。「え、まだ?」と思うほど、時間が止まったように感じる日がある。かと思えば、気づいたら夕食の時間になっていた、という日もある。

病院のベッドの上では、外の世界が遠く感じられます。スマホを開いても、元気に日常を送る人たちの投稿がまぶしくて、つい閉じてしまうことも。

この記事では、看護師としての視点と、がんサバイバーとしての実体験から、「入院中の時間を、少しだけ豊かにする方法」をお伝えします。

「時間を潰す」のではなく、「未来の自分への贈りものにする」という発想で。


入院中の時間は「良い日」と「悪い日」がある

まず最初に、大切なことをお伝えしたいと思います。

入院中の体調は、毎日違います。

術後すぐで点滴がつながっている日、抗がん剤の翌日で吐き気が続く日、検査結果を待ちながら気持ちが沈んでいる日——そういう日に「時間を有効活用しよう」と思っても、無理です。

逆に、薬が効いて体が楽になった日、回診で主治医から良い話を聞けた日、眠れた朝——そういう日は、なぜか気持ちも前向きになれる。

だから、この記事の使い方はこうです。

  • 体調が悪い日→「耳と目を休める系」をゆるく
  • 少し元気な日→「書く・読む・考える」系を
  • 気持ちが上向いた日→「未来に向けた時間」を
その日の体調に合わせて過ごし方を選ぶ

自分の体調と相談しながら、できることをひとつだけやってみる。それで十分です。


🌙 体調が悪い日にできること|”受け取るだけ”の時間

しんどい日は、何かを「する」より、何かを「受け取る」時間にしましょう。能動的に動かなくていい。ただ、そこにいるだけでいい。

① 耳から癒される|ラジオ・Podcast・音楽

目を閉じたまま楽しめる「音」は、しんどい日の最強のお供です。

radikoのプレミアム(月額385円)は、全国のラジオが聴けます。私は入院中、沖縄のローカルラジオをよく聴いていました。ゆったりとした沖縄の方言に、「なんくるないさー(なんとかなるさ)」という気持ちになれて。

もう一つ、僕のおすすめはTBSラジオの「安住紳一郎の日曜天国」です。安住アナの軽快なトークの中澤さんの声高らかな笑い声。この時だけ自分が病人というこを忘れさせてくれます。

NHKのらじるらじるは無料で聴けて、落ち着いたトーンのニュースや朗読番組も充実しています。

Podcastなら「ゆる〇〇ラジオ」シリーズが人気です。語学・歴史・科学・哲学など、軽いトーンで学べるコンテンツが多く、難しく考えずに「聞き流す」ことができます。

音楽は、気分に合わせてプレイリストを変えるのがコツ。しんどいときは激しい曲より、ゆったりしたジャズやクラシック、自然音(雨音・焚き火など)がおすすめです。SpotifyやApple Musicの「リラックス」「睡眠」プレイリストを試してみてください。

しんどい日の最強のお供

② 目から癒される|YouTube・映画・ドラマ

病院のテレビはテレビカードが必要で、意外と費用がかかります。1日500円として、2週間で7,000円。スマホやタブレットで動画を見る方が、コストも自由度も高くておすすめです。

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YouTubeプレミアム(月額1,280円)は、広告なしでサクサク見られます。私が入院中によく見ていたのは、海外の絶景を旅する動画。「退院したら行きたいなぁ」と眺めていると、未来への希望がじんわり湧いてきました。

Netflixや Amazon Primeで連続ドラマを一気見するのも◎。没入感があって、時間があっという間に過ぎます。私のおすすめは「コメディ・ほっこり系」のドラマ。重いテーマのものは、入院中のメンタルにこたえることがあるので、気持ちが軽くなるものを選ぶといいですよ。

入院中のデジタル環境

③ 「ぼーっとする」勇気を持つ

看護師として断言します。

入院中に「ぼーっとすること」は、決して時間の無駄ではありません。

体は、休んでいる間に治ります。睡眠中に細胞が修復されるように、ぼーっとしている時間も、体と心が回復するための大切な時間です。

「何かしなきゃ」という焦りが、かえって体の回復を妨げることがあります。特に術後や化学療法後は、何もしない時間を罪悪感なく持てるよう、自分に許可を出してあげてください。

ぼーっとすることは時間の無駄ではない
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☀️ 少し元気な日にできること|”作り出す”時間

体が少し楽な日は、受け取るだけでなく、自分から何かを作り出す時間にしてみましょう。ベッドの上でできる、小さなことで十分です。

④ 書く|日記・手紙・タイムバケット

私が入院中にいちばんよかったと思っているのが、「書くこと」です。

ノートとボールペン1本。またはスマホのメモ帳があれば、誰でもできます。

日記は、その日の体調・気持ち・気づきをひとことでも残すだけでOK。退院後に読み返すと、「あの日よりずっと元気になった」と実感できる、かけがえない記録になります。

未来の自分への手紙は、「1年後の自分へ」「5年後の自分へ」という形で書くもの。今感じていること、これからやりたいことを書くと、不思議と気持ちが前向きになっていきます。

タイムバケットとは、「死ぬまでにやりたいことリスト」のこと。漠然とした目標より、「〇年後に〇〇をする」という期限付きの夢を書き出します。私は病室で、ずっと憧れていた渡辺美里さんのコンサートチケットをオンラインで予約しました。小さな未来への約束が、毎日の点滴の時間を希望に変えてくれました。

未来の自分への約束

⑤ 読む|本・電子書籍・Kindle Unlimited

入院中の読書は、外の世界への小さな扉です。

紙の本は、スマホやタブレットと違って目が疲れにくく、ページをめくる感触が心地よい。でも重い本は持ち込みにくいので、文庫本や薄めの本がおすすめです。

Kindle Unlimited(月額980円)なら、数十万冊が読み放題。スマホ1台でいつでもどこでも読めるので、荷物が増えません。入院前に登録しておくと便利です。

私の場合、入院中は難しいビジネス書より、エッセイや旅行記、小説が読みやすかったです。思考が落ち着かない時期は、ストーリーに引っ張ってもらえる小説が特におすすめ。

また、多くの病院が市立図書館と提携していて、オンラインで本を予約・貸し出しできるサービスを提供しています。院内の掲示板やナースステーションで確認してみてください。無料で利用できる場合が多いです。

外の世界への小さな扉

⑥ 学ぶ|語学・資格・オンライン講座

入院中は、意外と「まとまった時間がある」という側面もあります。

仕事、家事、育児——そういった日常の忙しさから切り離された時間。もし体調が許すなら、ずっとやりたかったことを始める機会にしてみるのはどうでしょう。

私は両学長のお金の大学をYouTubeで視聴し、今後のライフプランを練っていました。

YouTubeには、料理・音楽・絵・プログラミングなど、趣味の学習動画が無料で豊富にあります。「退院したらこれをやってみよう」という目標ができると、入院生活の質が変わります。

⑦ 病院内を”探険”する

主治医から歩いてOKの許可が出たら、病院内をゆっくり散策してみてください。

大きな病院は、1つの街のようです。地下の売店、屋上の庭園、患者図書館、美容室・理容室・コンビニ——普段は気づかない場所に、ほっとできるスポットが隠れています。私の入院した病院には寿司屋もあり回らない寿司も楽しめます。

廊下の掲示板には、がんサポート室の案内、患者会の情報、ピアサポーターの連絡先なども貼ってあります。私はこれで、同じがんの先輩サバイバーやソーシャルワーカーと知り合うきっかけをもらいました。

ただし、歩きすぎは禁物。体調と相談しながら、無理のない範囲で。

小さな町を歩くように

🤝 人とつながる時間にする

⑧ 家族・友人とのビデオ通話

入院中、孤独を感じることは珍しくありません。特に面会制限がある病院では、家族の顔を見たくても見られない日が続きます。

LINEのビデオ通話やZoomは、無料でいつでも使えます。「ちょっと顔見せて」の一言から始まる15分の通話が、その日の気持ちをずっと軽くしてくれます。

遠方に住む親戚や、久しぶりの友人に連絡するチャンスでもあります。「入院中なんだ」と言うと、意外なほど多くの人が「実は私も……」と打ち明けてくれることがあって、つながりの温かさに驚くことがあります。

⑨ ベッド周りに”話題のタネ”を置く

看護師として、病室を訪れるとき、患者さんのベッドサイドをさりげなく見ています。

写真、マスコット、読みかけの本、ひと目で趣味がわかるもの——そういったアイテムがあると、「これ、好きなんですか?」と声をかけやすくなるんです。

看護師もスタッフも、「患者さんと仲良くなりたい」と思っています。でも忙しい業務の中では、なかなかきっかけがつかめない。ベッドサイドの小物が、その橋渡しをしてくれます。

私が入院中、ベッドに置いていたある小説が話題になって、若い看護師さんと「看護師の働き方」について深夜まで語り合ったことがあります。病室の空気が、一気に温かくなりました。

ベッドの周りに話題の種をおく

⑩ 同室の方との、ちょうどいい距離感

大部屋では、カーテン1枚を挟んで見知らぬ人と数週間をともにします。

深入りしなくていい。でも、廊下ですれ違ったとき、洗面台で顔を合わせたとき、「おはようございます」「お体の具合はいかがですか?」——そんな一言で、病室の空気がやさしくなることがあります。

うちの母は乳がんの入院で、なんと一泊二日でも連絡先を交換して帰ってきたツワモノ。人それぞれのペースで、静かに寄り添い合える関係が築けるといいですね。

同室の方との距離感

🩺 看護師目線|”早く回復する”患者さんの共通点

26年間、たくさんの患者さんを見てきて、気づいたことがあります。

回復が早い方には、共通点があります。

  • 「先のこと」を話す:退院後の計画、食べたいもの、会いたい人——未来の話をよくされる方は、表情が明るい
  • 小さなことに喜べる:「今日、お粥が食べられた」「点滴が一本減った」——そういう小さな前進を素直に喜べる方
  • スタッフに本音を言える:「痛い」「不安」「眠れない」を正直に伝えてくれる方。抱え込まない人が、早く次のステップに進める
  • 無理に明るくしない:つらいときはつらいと認める。頑張りすぎない。心の正直さが、体の回復と連動していると感じます

「時間を有効活用しよう」と焦らなくていい。ただ、今日1日を、自分らしく過ごすことが、回復への一番の近道です。

何もしないという積極的な治療

💛 くるみんの入院中「やってよかった」ランキング

最後に、私自身が入院して「やってよかった」と思ったことを正直にランキングにしてみます。

🥇 1位:タイムバケットを作って、コンサートチケットを予約した
病室でスマホを開いて、渡辺美里さんのコンサートを予約した瞬間の高揚感は今でも覚えています。「絶対に行く」という小さな約束が、治療のモチベーションになりました。

🥈 2位:入院日記をXでPOSTした
「今日は点滴が6時間かかった」「夕ごはんのお粥が意外においしかった」そんな些細なことをXで投稿。退院後に読み返すと、「あんなにしんどかったのに、ここまで来た」と自分を誇らしく思えます。ネガティブな愚痴でも癒してくれますし、ポジティブな投稿にはみんな喜んでくれました。

🥉 3位:沖縄ラジオを流しっぱなしにした
「なんくるないさー」の精神で、気負わず毎日を乗り越えられました。音の力って、すごいです。
その一年後に家族と沖縄旅行に行くきっかけとなりました。南の風は手術の傷にもやさしかったな。

4位:病院内の患者図書館を発見した
知らなかった!同じ病院に通うがん患者さんが書いた体験記ノートが並んでいて、読みながら何度も泣きました。「この人も乗り越えたんだ」という連帯感が生まれました。

5位:夜の廊下を一人で歩いた
消灯後、ナースステーションの明かりだけが灯る廊下を、点滴を引きながらゆっくり歩く時間。静けさの中で、「生きているな」と実感できる、不思議な時間でした。

ベッドから広がる3つの距離感
入院中の過ごし方チェックリスト

🌸 まとめ|入院中の時間は、未来の自分への贈りもの

入院生活は、決して楽ではありません。痛みと不安と退屈が混ざり合った、独特の時間です。

でも、私は今こう思っています。

あの日々があったから、今の自分がある。

病室で書いたタイムバケット、聞き続けた沖縄ラジオ、夜の廊下を歩いた記憶——全部が、今の私の一部になっています。

時間を「潰す」のではなく、「積み重ねる」。

今日という日は、もう二度と戻りません。でも、今日を丁寧に過ごすことは、必ず未来の自分に届きます。

どうか、今日も無理せず、自分らしく。

──くるみん(訪問看護師・がんサバイバー)

くるみん

くるみん(訪問看護師26年・がんサバイバー)

看護師として26年間、がん患者さんと向き合ってきました。2024年に自身も尿管がんのステージ3bと診断され、現在も定期検査で経過観察中。同じ悩みを抱える方の力になりたいと、日々X(@NurseFightsBack)で発信しています。

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