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遺伝性のがん、リンチ症候群を知ってますか?

この記事を書いた人:くるみん

がんサバイバー×看護師。療養と生活のリアルを発信中。
「前を向きたい人の、灯りになれるブログ」を目指しています。

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〜がんは突然じゃなかった。私が遺伝子から知った未来予想図〜

がんって、ある日突然やってくるものだと思っていませんか?
でも私の場合、それは“すでに決まっていたこと”だったのかもしれません。
なぜなら、私のがんは「遺伝性」だったからです。

家系に受け継がれていた「がんの種」

私の母親の家系は、いわゆる“がん家系”でした。
8人兄弟のうち、実に7人ががんを経験。親族の間では「うちの家系、がんが多いよね…」と、まことしやかに噂されていました。でもそれは、あくまで“偶然”だと思っていたんです。

そんなある日。20歳だった私は、トイレで便にほんの一筋の血がついているのに気付きました。最初は「痔かな?」と軽く受け止めて、ボラギノールのような薬をもらって終わるはずでした。でも、なかなか治らない。念のために大腸内視鏡を受けた結果、S字結腸に2.5cmのポリープが見つかりました。

そのとき、私は担当医に「実は家族にがんが多くて…」と話したんです。すると先生の目が変わりました。

ちょうど30年ほど前、医療の現場で遺伝子診断の研究が始まった頃のことでした。運が良かったのか悪かったのか、私はある研究の対象になり、無償で遺伝子検査を受けさせてもらえることに。そこで分かったのが、「リンチ症候群」という病気の存在でした。

リンチ症候群とは?

リンチ症候群とは、がんの原因となる異常な細胞を修復するための遺伝子が、生まれつきうまく働かないという遺伝性の病気です。特に大腸がん、子宮体がん、胃がん、尿管がんなど、さまざまながんのリスクが高まります。そして、この疾患は親から子へ、50%の確率で受け継がれます。

つまり私は、「がんになりやすい体質」を遺伝として持って生まれてきた、ということ。

遺伝性の病気が「人生の選択」に影を落とす瞬間

20代の頃は、正直あまり深く考えていませんでした。
「まあ、いつかなるかもしれないし…」と、どこか他人事だった。

でも、それが現実味を帯びてきたのは「結婚」を意識したときです。
子どもが生まれたら、私のこの体質を半分の確率で受け継ぐかもしれない。
がんで苦しむ未来を、自分の子どもに渡してしまうかもしれない。
それを、当時付き合っていたパートナーに伝えるべきか、すごく悩みました。

結局、プロポーズの前に自分の体のこと、がんの家系であること、遺伝性のがんであることをすべて話しました。理解してもらえたことに、心から感謝しています。

そして、予想は現実に

49歳。私は尿管がんを発症しました。
そして、さらに転移。思っていたよりも早く、厳しい現実がやってきました。

息子も20歳を迎え、そろそろ自分の体に「遺伝」というバトンが渡されている可能性について、話していかなければならないと感じています。

同じような不安を抱えるあなたへ

がんは、誰にでも起こりうる病気。でも、遺伝的なリスクが高い人も確実に存在します。
もしあなたの家族に、若くしてがんになった人がいたら——特に、大腸がんや子宮がんが多いなら、ぜひ一度「遺伝性がん」の可能性を疑ってみてください。

また、今では医療機関での遺伝子診断に加え、市販の遺伝子検査キットでもある程度のリスクを把握することができる時代です。例えば、【BRCA遺伝子】や【リンチ症候群関連のMSH2/MLH1遺伝子】などは、特定の検査でリスク評価が可能です。

遺伝性がんの代表例と遺伝子検査の可否(簡易まとめ)

遺伝性がん症候群関連遺伝子リスクが高いがん遺伝子診断市販キット対応
HBOC(乳がん・卵巣がん)BRCA1/2乳がん・卵巣がん医療機関・市販あり一部あり
リンチ症候群MLH1, MSH2など大腸がん、子宮体がん、尿管がん医療機関のみ一部市販にあり
家族性大腸腺腫症(FAP)APC大腸がん医療機関不可
リー・フラウメニ症候群TP53多種(若年発症)医療機関不可

遺伝情報は「未来予想図」

「遺伝子を知るなんて、怖い」と感じる方もいるかもしれません。
でも私は、これは“未来を描く地図”のようなものだと思っています。

リスクがわかれば、早めの検査や予防、生活習慣の改善など、“できること”が増えるんです。
そして、自分の未来だけでなく、大切な家族の未来も守れるかもしれません。

もし、あなたやあなたの大切な人が同じような不安を抱えていたら、ぜひ「遺伝性がん」のことを一緒に考えてみませんか?

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