高額療養費、2026年8月から何が変わる?がん患者への影響を看護師が解説

この記事を書いた人:くるみん

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「また制度が変わるって聞いたけど、私の治療費はどうなるの?」

2026年8月から、高額療養費制度が改定される予定です。ニュースや保険会社のお知らせで名前だけ聞いたけれど、「具体的に何がどう変わるのかわからない」という方がほとんどだと思います。

私自身も尿管がんのサバイバーとして、そして訪問看護師として、この改定は他人事ではありませんでした。今回は、制度の変更点をがん患者さんの目線で、厚生労働省の一次資料に基づきながら、ひとつひとつ丁寧にほどいて解説していきます。

「なんとなく負担が増えそうで不安」という方も、「実は救済策が増えた部分もある」という話を知ってほしくて、この記事を書きました。一緒に確認していきましょう。

制度を知ること

今回の改定、ひと言で言うと?

ひと言でまとめるなら、こうなります。

💡 月々の上限額は少し上がるけれど、年間で見ると長期療養の方には救済策が新設される改定です。

月ごとの自己負担の上限が引き上げられる一方で、「年間でこれ以上は払わなくていい」という新しい仕組みが生まれます。特に抗がん剤治療など、毎月ずっと治療費がかかる方には朗報となる改定が含まれています。

くるみん
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「負担増」の側面だけが報道されがちですが、長くがんと闘っている方には「年間上限」という新しい守りが生まれます。この記事では両面をフラットにお伝えします。

改訂を一言で

月額上限が引き上げ——具体的にいくら増える?

高額療養費制度では、1か月の医療費の自己負担に「上限額」が設けられています。その金額が、2026年8月から全所得区分で引き上げられる予定です。

下の表で、改定前後を比べてみましょう。

所得区分年収の目安改定前(〜2026年7月)改定後(2026年8月〜)月額の差額
区分ア年収約1,160万円以上252,600円+1%270,300円+1%+17,700円
区分イ年収約770〜1,160万円167,400円+1%179,100円+1%+11,700円
区分ウ(中間層)年収約370〜770万円80,100円+1%85,800円+1%+5,700円
区分エ年収約370万円以下57,600円61,500円+3,900円
区分オ(住民税非課税)低所得者35,400円36,900円+1,500円

出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」(令和7年12月16日 専門委員会取りまとめ/令和8年度予算成立により施行)

会社員の方でもっとも該当者が多い「区分ウ(年収370〜770万円)」では、月の上限が80,100円から85,800円へ、約5,700円の引き上げとなります。

1か月あたり約5,700円の増加は、年間で換算すると約68,400円。毎月治療費が上限に達している方にとっては、年間6万円以上の負担増となる計算です。

💡 「+1%」とは?:高額療養費の上限は「定額+医療費が基準を超えた分の1%」という計算式になっています。治療費が高いほど上限も少し上がります。

月額上限の引き上げ

「年間上限」の新設——これはがん患者への朗報

今回の改定でもっとも注目すべき新設ルールが、「年間上限」です。

これまでの高額療養費制度は、あくまで「1か月ごと」の上限しかありませんでした。月ごとの上限以下だけど、毎月毎月ずっと治療費がかかる……という方への救済は、限定的でした。

2026年8月から、年間の自己負担が一定額を超えた場合、その後の月は窓口負担がゼロになる仕組みが追加されます。

所得区分年収の目安年間上限額(新設)
区分ア年収約1,160万円以上168万円
区分イ年収約770〜1,160万円111万円
区分ウ年収約370〜770万円53万円
区分エ〜年収約370万円53万円
区分オ住民税非課税29万円

📋 年間上限の例(区分ウ・年収370〜770万円の場合)
例:抗がん剤治療で毎月7万円の自己負担が続く方の場合
7万円 × 12か月 = 84万円(もし上限がなければ)
→ 年間上限53万円を超えた月(約7〜8か月目以降)から、その月の窓口負担がゼロになります。

くるみん
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母が腎臓がんで毎月免疫チェックポイント阻害薬を受けているのですが、まさにこの「年間上限」が救いになりそうです。毎月毎月少しずつ払い続けて年間で大きな金額になる——そういう療養スタイルの方に特に有効な制度です。

がん患者の朗報

⚠️【ここが超重要】年間上限は「自動適用」ではありません

これは見落とされがちですが、極めて大切なポイントです。

厚生労働省の発表によれば、年間上限の運用は当面「患者本人からの申出を前提」とした仕組みで始まる方針です。

つまり、自動的に窓口負担がゼロになるわけではなく、自分で「年間上限を超えました」と健康保険組合などに申請する必要があるということです。

ですので、

  • 毎月の医療費の領収書は必ず保管する
  • マイナ保険証で医療費情報を確認できるようにしておく
  • 年間上限に近づいてきたら、加入している健康保険の窓口に相談する

この3つを意識しておいてください。「制度はあるのに、知らなかったから損をした」を防ぐためです。

くるみん
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年間上限の申出制という運用は、正直「もう少し患者にやさしい設計にしてほしかった」と感じます。でも、知っていれば申請できる制度です。私たちサバイバーや家族の側で、まずは「知る」ことから始めましょう。

最重要ポイント

多数回該当は据え置き——長期治療中の方は安心を

「多数回該当」という言葉、聞いたことはありますか?

これは、直近12か月(1年間)に高額療養費の上限に達した月が3回以上あった場合、4回目以降はさらに低い上限額が適用される仕組みです。

📋 多数回該当の上限額(2026年8月以降も変わらず)
・区分ア:140,100円
・区分イ:93,000円
・区分ウ:44,400円
・区分エ:44,400円
・区分オ:24,600円

例えば、毎月治療費が上限に達している方は、4か月目から月の負担が85,800円→44,400円に下がります(区分ウの場合)。

今回の改定では、この多数回該当の金額は全所得区分で据え置き、つまり変更なし、となりました。長期にわたって治療を続けているがん患者さんへの配慮として、この部分は維持されています。

くるみん
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毎月治療費が上限に達している方は、4か月目から「多数回該当」が適用されます。月額上限の引き上げの影響を強く受けるのは最初の3か月だけ、というケースも多いはずです。

なお、「年収200万円未満」の方については、多数回該当の金額が現行よりも引き下げられる予定です(低所得者への配慮)。

かわらない安心

影響が大きい人・小さい人

今回の改定、全員に同じように影響するわけではありません。あなたの治療スタイルによって、受ける影響はかなり違います。

影響が大きい可能性がある方

  • 毎月の医療費が上限額ギリギリ(または届かない)程度の方 → 月額上限の引き上げがそのまま負担増になります
  • 年収370〜770万円(区分ウ)で毎月50,000〜85,000円台の負担がある方 → 1か月最大5,700円の増加
  • 今年の8月以降に手術・入院を予定している方 → タイミングによっては旧額が適用されないケースも

影響が小さい・むしろ恩恵を受ける可能性がある方

  • 毎月高額の治療費がかかっていて、年間上限(区分ウなら約53万円)に近づきそうな方 → 年間上限を超えた月以降は窓口負担がゼロになります(※申出制)
  • 直近12か月で3回以上上限に達している方(多数回該当) → 4回目以降の44,400円は据え置きです
  • 住民税非課税世帯の方(区分オ) → 引き上げ幅が最も小さい区分です(+1,500円)
  • 年収200万円未満の方 → 多数回該当の金額が引き下げられる予定です
くるみん
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一度、自分がどのパターンに近いか確認してみてください。不安な方は、加入している保険の窓口や病院のソーシャルワーカー(生活相談員)に相談するのが一番確実です。

あなたへの影響は

2027年8月からの「第2段階」も知っておこう

今回の改定は2段階で行われます。

  • 第1段階(2026年8月〜):月額上限引き上げ+年間上限新設
  • 第2段階(2027年8月〜):所得区分の細分化

第2段階では、現行の5区分が13区分に細かく分かれ、年収約510〜650万円層の月額上限は約9.8万円、年収約650〜770万円層は約11万円となる予定です。

「年収レンジによる急な負担増」を緩和するための見直しですが、中間層〜やや上の層には影響が大きい改定になります。来年の話ですが、頭の片隅に入れておいてください。

2027年8月の第2段階

今からやっておくべき4つのこと

制度の変更を知ったら、次は行動です。難しいことはありません。以下の4つを確認してみてください。

① 自分の所得区分を確認する

高額療養費の上限は所得によって変わります。会社員の方は協会けんぽや健康保険組合、自営業の方は市区町村の国民健康保険窓口に「自分の区分」を問い合わせることができます。

② マイナ保険証または限度額適用認定証を準備する

入院・手術の前にこの準備をしておくと、窓口での支払いが最初から上限額内で済みます。準備していないと、いったん高額を立て替えて後から払い戻しを待つことになります(「償還払い」といいます)。マイナ保険証があれば、申請書の取り寄せは不要です。

③ 年間の医療費を「記録」しておく

これが2026年8月以降、特に大切になります。年間上限は申出制で始まるため、自分の年間累計を把握していないと活用できません。家計簿アプリでも、ノートでも、領収書ファイルでも構いません。月ごとの自己負担額を記録する習慣を始めましょう。

④ 差額ベッド代・先進医療費など「対象外費用」も把握する

高額療養費制度がカバーするのは保険診療の自己負担分のみです。差額ベッド代、先進医療費、入院時の食事代の一部、交通費などは対象外です。長期療養になりそうな方は、これらの「対象外費用」をどう備えるかも考えておきましょう。

💡 ソーシャルワーカーを活用しよう:病院には「医療ソーシャルワーカー(MSW)」と呼ばれる生活・お金の相談員がいます。高額療養費の手続きや、その他の公的支援制度の相談に乗ってくれます。遠慮なく「お金のことを相談したい」と病院の窓口に申し出てみてください。

4つのアクション

まとめ

2026年8月からの高額療養費制度改定を、もう一度整理します。

  • 月額上限が引き上げ(区分ウは月+5,700円、区分アは月+17,700円)
  • 年間上限が新設(区分ウは年53万円、区分オは年29万円)
  • 多数回該当は据え置き(区分ウは4回目以降44,400円のまま)
  • 年間上限は申出制で開始(自動適用ではなく自己申請が必要)
  • 第2段階(所得区分の細分化)は2027年8月から

「負担が増える」という報道だけで不安にならないでください。制度には救済策も含まれています。特に長期療養中の方は、年間上限の新設が強い味方になる可能性があります。

自分の治療スタイル・所得区分・今後の治療計画を踏まえて、ぜひ一度、保険窓口や病院のソーシャルワーカーに相談してみてください。

自分を守ること
くるみん
くるみん

制度の話は難しく感じるかもしれませんが、知っているだけで受け取れるお金が変わってきます。がんと闘うあなたに、少しでも余裕が生まれますように。

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くるみん

くるみん(訪問看護師・がんサバイバー)

看護師歴26年。2024年に自身も尿管がんのステージ3bと診断され、現在も定期検査で経過観察中。同じ悩みを抱える方の力になりたいと、日々X(@NurseFightsBack)で発信しています。

出典・免責事項

📖 出典

  • 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」(令和7年12月16日 高額療養費制度の在り方に関する専門委員会 取りまとめ):https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001661792.pdf
  • 令和8年度予算成立により実施確定(国会審議の結果、一部数値が微修正される可能性があります)

⚠️ 本記事は2026年5月時点の情報に基づいています。最新の正確な情報は、加入している健康保険の窓口、または厚生労働省の公式発表でご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別のケースについては医療ソーシャルワーカー・保険窓口・税理士など専門家への相談をおすすめします。

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