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第6話|強くなくていい——弱さを認め、自分の味方になれた日。

この記事を書いた人:くるみん

がんサバイバー×看護師。療養と生活のリアルを発信中。
「前を向きたい人の、灯りになれるブログ」を目指しています。

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がんになって「よかった」
がんになって「よかった」なんて、私はやっぱり言えません。
抗がん剤の副作用、繰り返す検査、不安な夜…そんな中で、心も体もすり減って、「なんで私が」と何度も思いました。

でもそれでも、がんになったからこそ見えた世界があります。

それは、がんにならなければきっと気づけなかった——
自分自身のこと、家族のこと、人とのつながり、生きるということの重み。

このシリーズでは、「がんを経験したからこそ感じた10の気づき」を、ひとつずつ丁寧に綴っていきたいと思います。

無理に前向きにならなくてもいい。
でも、もし心のどこかで「何かを感じてくれた」なら、それはきっと、同じように闘っている誰かの光になると信じています。

「がんを経験したからこそ感じた10の気づき」第6話は、「強くなくていい」についてお話しします。

思考が止まったあの日から

「がんかもしれない」——そう医師に言われた瞬間、頭の中が真っ白になった。

何をどう考えたらいいのか、自分でもわからなかった。ただ時間だけが過ぎていく。そんな中で、私は人生で初めて“弱さ”と正面から向き合うことになった。

それまでの私は、どこかで「弱音を吐いたら負け」「強くなきゃいけない」と思い込んでいた。看護師という職業柄もあるかもしれないし、年齢的なものもあったのかもしれない。でも、そんな“強さの仮面”が崩れたとき、本当の意味で自分を見つめ直すきっかけになった。

そして何より、“弱さ”を認めることが、人とのつながりを深めていく一歩になるのだということを、後になって強く実感しました。

私は大丈夫——の裏側で

本音を隠していた日々

がんという言葉の重みは、看護師として働く私にとっても、いや、むしろ知っているからこそ深く響いた。

「私は大丈夫です」——言葉では言いうけれど、心の中は不安と恐怖でいっぱいだった。

ある日、会社のちょっと苦手な事務員に「何かありました?」と声をかけられた。あまり関係が良くない事務員にまで“異変”を見抜かれ声をかけられたことが実はショックだった。

私の顔色や態度が、そこまで変わっていたんだと思う。自分では隠していたつもりでも、バレバレだったんだ。

「バレたくなかったのに」「強がっていたのに」——がんであることをわざわざ告げる必要はないと思っていた。だからこそ、隠していたつもりだったその事実を、雰囲気や態度だけで悟られたことは強烈なショックだった。

本音を話せたのは限られた人だけ

本当の気持ちを打ち明けられたのは、妻と数人の親しい友人、そしてSNS(X)のフォロワーの方々だった。

「怖い」「どうしよう」「泣きそうだ」——そんな弱音を吐けた場所が、私を支えてくれた。

“弱さ”を見せても、拒絶されなかった。むしろ、共感してくれる人がいた。その事実だけで、救われる気持ちがした。

何も解決していなくても、誰かが「わかるよ」と言ってくれるだけで、涙がこぼれるほどほっとする。あなたにも、そんな場所はありますか?

ほんの一言のやりとりに、深く支えられることがある。SNSという“顔の見えない場所”であっても、人と人はつながることができる。私はそれを、実体験として知ることができた。

がんサポートセンターという“助けてくれる場所”

看護師でも知らなかった「相談できる場所」

精密検査で入院したある日、担当の看護師が不安そうな私を見てアドバイスしてくれた。

「がんサポートセンター、行ってみたらどうですか?」

その言葉に、私は戸惑った。そんな場所があることすら、知らなかった。

いや、正確には知っていても、「自分には関係ない」と思っていたのかもしれない。看護師として“支える側”に立っていた私は、「相談する側」になることに、どこか抵抗があった。まだ正真正銘の「患者さん」になっていなかったんだと思う。

でも、あの一言で、ふっと肩の力が抜けた。「頼ってもいいんだ」「私はがん患者なんだ」と初めて思えた瞬間だった。

それは、私の中にあった「自立していなければならない」という思い込みを、優しく溶かしてくれた気がして脱力した。

行かなかった理由と、後悔しないための提案

結局、そのとき私はがんサポートセンターには行かなかった。時間が合わなかったこと、予約が必要だったこと……理由はあった。

けれど今振り返ると、それは「行かなくていい理由」を自分で作っていただけだった気がする。

もしあのとき、ほんの少し勇気を出して扉を開いていたら——もっと心が楽になっていたかもしれない。

だからこそ、今、不安を抱える誰かに伝えたい。

相談していい。頼っていい。

専門家の力を借りることは、“弱さ”ではなく、自分を守るための選択肢なのだ。

行動を起こすタイミングに、早い遅いはない。でも「今」感じているその不安に、耳を澄ませてみてほしい。

小さな一歩でいい。誰かに話す、それだけでも十分なスタートになるのだから。

弱さに気づけた日、自分を味方にできた日

“弱さ”を押し込めていると、自分自身が苦しくなる。

人に頼らないことで自立しているように見えても、心はどんどん擦り減っていく。

がんを宣告されて日々、仮面をつけながら頑張って仕事で運転している最中、涙が出てきた。がんということを考えると余計涙が止まらず、運転できないほど視界がぼやけてしまい慌てて郵便局の駐車場に入ったことを覚えている。

嗚咽した。

同時に、自分はこんなにも頑張っているんだ、心が弱っているんだと自覚した。そしてそんな自分をなぜかいとおしく感じた。

仮面をつけて頑張るんじゃなくて、仮面を外し自分を認め自分に優しくなろうと。

こんな時ぐらい、”自分に優しく”ていいじゃない!

“頼ること”は、自分を大切にすること

がんという病気は、体だけでなく心にも大きな波を起こします。
「看護師だから」「男だから」「親だから」——
いろんな立場や役割が、“強くあらねば”というプレッシャーを生み出すこともあります。

けれど本当は、誰だって、怖くなることもあるし、
誰かにすがりたくなる夜もあるんです。

そんなときに、自分の弱さを否定せずに受け入れること。
そして、それを信頼できる誰かに言葉にして伝えること。

それが「自分を大切にする」最初の一歩なのかもしれません。

あなたが“あなたの味方”でいるために

今、あなたはどんな言葉で、自分を励ましていますか?

「ちゃんとやらなきゃ」「泣いたらだめだ」
そんな言葉ばかりを、自分に投げてはいないでしょうか。

どうか、**“大丈夫じゃなくても、いいんだよ”**と、
今日のあなたに言ってあげてください。

そしてもし、あなたの中に不安があるなら。
それを、誰かに話してみませんか?

あなたの中にあるその“弱さ”こそが、
あなたが誰よりもやさしい証であり、
人とつながるための大切な入口なのですから。

🍀「がんを経験したからこそ感じた10の気づき」の第1話から第5話です。それぞれにがん患者ならではの気づきがあります。
これらに気が付いたことで人生に深みがでたと感じています。ぜひ読んでみてください。

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