治療が終わっても「終わりじゃなかった」
治療が終わったら、少しは楽になる。そう思っていたのに——
BCG治療が終わって、ほっとしたのも束の間、私の体に現れたのは「不調のサイン」でした。 何度もトイレに行きたくなったり、肌がかゆくて夜眠れなかったり。 「どうしたんだろう、私の体…」そう感じながら過ごす日々が続きました。 今回は、がん治療のあとに私が感じた“免疫力の低下”について、同じように不安を感じているあなたに向けて、体験と気づきを綴ってみたいと思います。
BCG治療後に起きた体調不良と免疫力の低下
治療が終わった直後は、少し身体が軽くなった気がしていました。 「よく頑張ったな」って、自分の体を労ってあげたい気持ちもあったんです。次の検査までの間、しばらく落ち着いた生活ができるだろうと考えていました。
でもその1週間後くらいから、私の体に異変が現れ始めました。
頻尿・排尿痛——繰り返す膀胱炎のような症状
治療後1週間ほどで、排尿時のチクチクした痛みと頻尿が始まりました。「また膀胱炎か…」といううんざりするような気持ちとともに、体が何かおかしいと感じました。トイレのたびに痛みがあり、外出も不安になるほどでした。特に水の音を聞くと我慢できなくなったり、帰宅直前に強烈な尿意がくるなど、生活にも支障が出始めました。
さらに、尿の混濁も見られ、これはまさにBCG治療中に経験していたのと同様の症状でした。治療が終わったはずなのに、体はまだ何かと戦っているような、そんな感覚でした。
じんましん——体のあちこちがかゆくて眠れない
もともと私はアレルギー体質で、蕁麻疹が出やすい傾向にありました。しかし、治療から一週間が過ぎたころから、毎日のようにじんましんが体の各所に現れ、仕事に集中できないほどかゆみに悩まされるようになったのです。
寝ているときに体が温まるとムズムズし、仕事中のストレスでも皮膚に蕁麻疹のような反応が。
治療中にはなかった反応が、終わったあとに一気に現れたのです。ウエストの服がきつくなる所や服が少し擦れるだけでも刺激になり、赤みやみみずばれのような発疹が出ることもありました。
かゆみは、見た目以上に集中力を奪い、睡眠にも影響します。痛みと同じように、あるいはそれ以上に生活の質(QOL)を低下させるのだと実感しました。


BCG治療のリーフレットを読み返してみたら、まれな症状として「体に発疹・蕁麻疹がでる」とありました。

BCG治療で免疫が元気になりすぎると、必要ないところにも反応して、皮膚が赤くなったり、かゆくなったりすることがあります。例えるなら家の警報装置が敏感になりすぎて、風が吹いただけでも鳴っちゃうみたいな状態。
当初は「免疫」と結びつけられなかった
正直、このときは「免疫力の低下」なんて言葉は頭に浮かびませんでした。ただただ「なんでこんなに体調が悪いのか」と戸惑っていた日々でした。病気がぶり返したのか、それとも新たな不調なのか、理由がわからない不安が大きかったです。
がん治療と免疫力低下の関係
BCG治療と膀胱粘膜の炎症反応
BCG治療は膀胱に炎症を起こし、免疫を活性化させてがん細胞を攻撃する治療です。そのため治療後も粘膜が敏感になり、感染しやすい状態が続くことがあります。実際に、BCG治療後に膀胱炎や排尿障害を起こす方は一定数いることが報告されています。
がん治療後の免疫バランスの乱れ
化学療法や放射線治療、BCG治療などは一時的に免疫系に強い負荷をかけます。回復期には、免疫過剰やアレルギー反応のような不調が現れることもあります。免疫系は非常に繊細で、体内のバランスが崩れると、一見無関係に見える皮膚や内臓にまで影響を与えます。
以下の各学会診療ガイドラインから出展・参照しています
・日本泌尿器科学会:膀胱がん診療ガイドライン
https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/39_bladder_cancer_2019.pdf
・日本皮膚科学会:蕁麻疹診療ガイドライン
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/1372913324_1.pdf

免疫と向き合うセルフケアのすすめ
薬の効果から気づいた「体の回復力」
抗生剤や抗ヒスタミン薬が効いて、症状が落ち着いていく中で、「僕の体も頑張っているんだな」「薬で回復するって、こういうことか」と実感しました。体の中では、目に見えないところで着実に回復が進んでいたのだと思います。
見えないところで、静かに、でも確実に修復が進んでいた——そんなふうに思うと、体への信頼感が少しずつ戻ってきました。「薬が効く」という実感が、体への感謝や安心感につながった瞬間でした。
元気を支えるために大切な習慣
・ストレスを減らす:ストレスは免疫細胞の働きを弱めることが知られています。好きな音楽を聴いたり、趣味に没頭したり、自分なりのストレスケアを持つことが大切です。
・十分な睡眠をとる:睡眠中に分泌される成長ホルモンは、免疫の修復にも関与します。質の良い眠りは、体の自然治癒力を高めます。
・休日は仕事を持ち込まず心を休める:頭を休めることで、自律神経のバランスが整い、免疫機能の安定につながります。
・軽い運動(ラジオ体操・ランニング・ストレッチ)で体調を整える:適度な運動は白血球の働きを促し、免疫細胞の巡回を助けます。
・入浴やサウナで体を温め、血流を促す:体温が上がることで免疫機能が一時的に高まり、血流が良くなることで老廃物の排出も促されます。
これらは私が心掛けたい習慣です。今回は残念ながら、ストレスを減らす、十分な睡眠、仕事を持ち込まないができなかったため免疫機能が低下してしまったかもしれません。
治療の終わりは、心と体の“再出発”
がんというのは、健康で普通に暮らしていた日常から、 一瞬で精神も肉体も奈落の底に落ちるような出来事です。
そこから手術や化学療法を経て、少しずつ日常を取り戻していく—— その歩みは決してスムーズではなく、時に体調の波に翻弄されながらの再出発になります。
私も、膀胱炎や蕁麻疹といった体の不調を通して、 「まだ自分は回復の途中なんだ」と気づくことができました。
自分の体の変化に耳を澄ませ、素直になってください。
無理せず、焦らず、今のあなたの体を信じて、ゆっくり整えていきましょう。
治療のゴールは、人生のリスタート地点。
あなたのペースで、もう一度、体と歩いていけばいいんです。

※本記事は筆者の体験をもとに記載したものであり、すべての方に当てはまるものではありません。体調不良や不安がある場合は、必ず医師や専門医にご相談ください。
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