「がん検査、受けたほうがいいよって言われたけど、なんだか怖くて…」 「費用も気になるし、もし“がんです”なんて言われたらどうしよう…」
そんなふうに思ったことはありませんか? 実は、私もそうでした。
私は20歳のときに遺伝子診断を受け、「がんになりやすい体質」だと知って以来、胃カメラ・大腸カメラ・腹部超音波検査などを毎年受けてきました。自分の体に向き合い、早期発見のために行動していたつもりでした。
けれど、ある日告げられたのは、尿管という想定外の部位に発症した“稀ながん”。毎年検査をしていたにもかかわらず、私はがん患者になったのです。
多くの方は、年に一度の健康診断しか受けていないかもしれません。しかもその検査は、一般的な血液検査や胸部のレントゲン・バリウム検査などにとどまっているのではないでしょうか。
実際には、がんを見つけるにはもっと踏み込んだ検査が必要なことが多いのです。造影CT、内視鏡検査、超音波検査、マンモグラフィー、特殊な腫瘍マーカーの血液検査…私が今回体験した尿管鏡検査や逆行性腎盂尿管造影検査など、聞き慣れない検査も含まれてきます。
だからこそ私は今、伝えたいのです。
がんは、早期に見つかれば治せる可能性がある病気です。医療者であり個人としての私見ですが、年に一度の健康診断で異常が見つかっては遅い可能性もあります。
各種専門的ながん検診を定期的に受けて「早期発見」できれば、がんは治る可能性が高い病気です。 あなた自身の行動からしかがんの早期発見はできません。
この記事では、私が実際に体験したことをもとに、がん検査を考えている方が不安を少しでも減らせるように、次のようなポイントをわかりやすくお伝えしていきます。
- がん検査にはどんな種類があるのか
- 検査を受ける前に感じる不安の正体とその対処法
- 実際の費用や準備、どこまでしておくべきか
- そして、がんと向き合った私がたどり着いた「検査の意味」
あなたや、あなたの大切な人の命を守るきっかけになれたら——。 心から、そう願っています。
- がん検査って、どんなことをするの?
- がん検査前に不安になるのは、あなただけじゃない
- 費用や準備、どこまで調べればいい?
- 看護師として伝えたい「検査を受ける意味」
- 私が受けた遺伝子診断と、その後の話
- おわりに
がん検査って、どんなことをするの?
がん検査とひとことで言っても、実際には目的や部位によって検査方法はさまざまです。ここでは、代表的な検査を紹介し、それぞれの特徴や検査内容を簡単にまとめてみました。
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)
胃や食道、十二指腸の異常を調べるための内視鏡検査です。のどまたは鼻からカメラを挿入し、消化管粘膜を直接観察します。がんの早期発見やピロリ菌感染の確認にも役立ちます。

特に若い方は嘔吐反射がつよく辛い検査かもしれませんが、ファイバーが喉を通過してしまえば何とか耐えられます。検査施設によっては自分の胃の様子をリアルタイムに見ながら確認できます。
大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)
肛門から内視鏡を挿入して、大腸のポリープやがんの有無を調べます。前日から下剤を使った腸の洗浄が必要で、苦手意識がある方も多いですが、予防にもつながる重要な検査です。

心理的なハードルが大変高い検査だと思います。検査室は医師と看護師のみで薄暗く、タオルやブランケットをかけてくれ羞恥心にも配慮してくれます。大変有効な検査であるのでぜひ受けてください。
造影CT検査
ヨード系の造影剤を使い、体の中を立体的に撮影するCT検査です。肺・肝臓・腎臓・膵臓など、複数の臓器を一度に確認できるのが特徴です。

造影剤を使うので身体的なリスクとストレスが伴います。造影剤を入れた瞬間、体全体が暑く感じることが多いです。咳や喉の違和感があるときにはすぐに看護師さんや技師さんに伝えてください。くるみんは日本酒を飲み過ぎたときの温かさを感じました。
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乳房を専用の機器で圧迫しX線撮影します。乳腺の状態や腫瘤の有無を確認するために使われ、40歳以上の女性に特に推奨されています。

乳腺の状態や腫瘤の有無を確認するために使われ、40歳以上の女性に特に推奨されています。
また「挟んで痛い」と感じる方もいますが、検査は短時間で終わります。
腫瘍マーカーの血液検査
がん細胞が体内で放出する特定の物質(腫瘍マーカー)を血液中から検出する検査です。がんの種類によって異なるマーカーが存在し、腫瘍の有無や再発の兆候を知るための補助的な手段として活用されます。以下は、一般的によく用いられる腫瘍マーカーです:

腫瘍マーカーはスクリーニング(症状がない段階で病気の兆候を見つけるために行う検査)には不向きで、がんの診断確定には画像診断や組織検査が必要です。経過観察や治療効果の判定など、補助的に活用されます。
くるみんはCEAとCA19-9を毎年検査しています。泌尿器科系のがんとなってしまったので今後はPSAも追加されるでしょう。
- CEA(大腸・胃がんなど)
- CA19-9(膵臓がんなど)
- PSA(前立腺がん)
- AFP(肝臓がん)
- CA125(卵巣がん)
- CA15-3(乳がん)
- SCC(子宮頸がん・肺扁平上皮がん)
- NSE(小細胞肺がん)
- ProGRP(小細胞肺がん)
- CYFRA21-1(非小細胞肺がん)
- hCG(胚細胞腫瘍・妊娠性絨毛がん)

「スクリーニング」とは、医学的には 「症状がない段階で病気の兆候を見つけるために行う検査」 のことです。
がん検査におけるスクリーニングとは、がんの早期発見を目的とし、症状がまったくない健康な人を対象にして行う検診や検査を指します。
腹部超音波検査(エコー)
肝臓・胆のう・腎臓・膀胱・子宮・前立腺などを、体外から超音波を当てて観察します。放射線を使わないため安全性が高く、定期的なチェックに向いています。

エコーは体に負担がかからない検査です。特に腹部の超音波検査では、胃や腸内のガスや食べ物が観察の妨げとなるため、検査前の絶食が求められることが多くあります。
胸部レントゲン検査
肺の異常を確認するために行われますが、早期のがんを見つけるには精度が低いため、補助的な検査とされています。

看護師として胸部レントゲン検査で異常が発見されてからの受診では、がんはある程度進行している可能性があります。もし、レントゲン検査で異常が見つかったら、すぐに病院を受診することをお勧めします。
子宮頸がん検診(細胞診)
子宮の入り口から細胞を採取し、がんや異形成の有無を調べます。20代後半からの定期検診が推奨されています。

私の妹は母親から引き継ぐがん遺伝関連の変異「リンチ症候群」があり、定期検査を行っていたところ子宮頸がんが見つかり早期発見・早期治療につながりました。
尿細胞診
尿を採取し、尿路系(膀胱・尿管・腎盂)のがん細胞の有無を調べます。混濁尿や血尿がある場合などは検査結果に注意が必要です。

尿検査は痛みを伴わないので気楽に受けられる検査ですが、尿からは体の重要な変化がわかります。
私は「がんになりやすい体質」と診断された20歳以降、毎年欠かさずこれらの検査のうち、胃カメラ・大腸カメラ・腹部超音波検査を受けてきました。
けれど、それでも防ぎきれなかった。
私が罹患したのは、尿管という“想定していなかった場所”のがんでした。
そのとき初めて、「がん検査」と一言で言っても、部位や目的によって多種多様であり、必要な検査が一つではないことに、身をもって気づかされたのです。
そして今回、私が初めて経験したのが、尿管鏡検査や逆行性腎盂尿管造影検査という特殊な検査でした。
細い内視鏡を尿道から膀胱、尿管へと挿入して観察するこの検査は、決して楽ではありませんでしたが、「命を守るための検査」だと感じました。

膀胱鏡検査や逆行性腎盂尿管造影検査は尿検査や造影CT検査などを行い、がんの疑いが強いときに追加で行われる検査と考えてもらってよいと思います。特に逆行性腎盂尿管造影検査は入院して全身麻酔下で私は検査を受けました。
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この記事では、こうした私の体験を通して、「がん検査ってどうなの?」をできるだけわかりやすくお伝えしていきます。
がん検査前に不安になるのは、あなただけじゃない
「何か見つかったらどうしよう」「がんだったら、仕事も生活もどうなっちゃうんだろう」
そんな不安が、検査前には頭をよぎります。
私も例外ではありませんでした。
がんかもしれない——。 そんな言葉が浮かぶたびに、頭の中がぐるぐると回り、日常の音が遠のくような感覚に陥ったことを今でも覚えています。
でも、もっと苦しかったのは、 「この気持ちを誰にも言えなかったこと」です。
家族に心配をかけたくない。職場の人に変に思われたくない。そんな思いが交錯して、私は「大丈夫なふり」をしながら毎日を過ごしていました。
検査結果を待つ時間と日々——心が最も揺れる瞬間
検査が終わってから結果が出るまでの時間は、本当に長く感じられます。
スマホを見ても集中できず、Xを何度も開いては閉じ、ニュースを見ても頭に入らない。食事の味さえ、わからなくなることもありました。
寝る前の静かな時間に、不安が頭の中を支配してしまって寝つきが悪く不眠になったこともあります。
そんな自分に、「まだ何も決まっていないのに…」と責めることもありました。
でも、今なら言えます。
不安になるのは、当然のことです。
それは、あなたが自分の体や命に、ちゃんと向き合っている証拠だから。
恐れや戸惑いがあるのは、それだけ真剣に、未来を考えているからなのです。
とはいえ、不安に押しつぶされそうなときもあります。
そんなときに、私が助けられた3つの「こころの処方箋」をご紹介します。
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不安に向き合う3つの“こころの処方箋”
1. 不安を書き出して、可視化する
頭の中だけで考えていると、不安はどんどん膨らんでしまいます。私は、LINEのKeepメモに「今、怖いこと」「気になること」「知りたいこと」を書き出しました。不安を“見える化”するだけでも、整理され、少し安心できることがあります。

くるみんの奥さんに「不安なことを書きだしたらどう?」とアドバイスされやってみたんだよ!
2. 信頼できる人に話す
がん検査や診断の不安は、周囲に理解されにくいこともあります。私は看護師仲間の親友に「とにかく聞いてほしい」とLINEでメッセージを送り実際に会って正直に話すことで、自分の気持ちを整理することができました。答えが出なくても、話すことそのものが癒しになることもあります。
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3. 「今できること」に集中する
未来はまだわかりません。でも、今できること——食事、睡眠、少しの運動、自分を労わる行動——はあります。「検査を受けよう」と決めた時点で、あなたはすでに前に進んでいるのです。不確定な未来を心配するより”今”を大切に少しづつ歩き出してみませんか?
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費用や準備、どこまで調べればいい?
がん検査を受ける際、「どんな準備が必要?」「費用はいくらかかるの?」と不安になる方も多いと思います。医師からの説明だけでは十分に把握できないこともあります。
検査を受ける前に知っておきたいこと
検査をスムーズに受けるためには、**「正しい事前準備」**が欠かせません。
私が情報収集をしたのは主にインターネット、特にSNSでのリアルな体験談です。
なかでも役に立ったのが、「検査後に痛みが出るかもしれないから、あらかじめ主治医に痛み止めを処方してもらったほうがいいよ」というアドバイスでした。
この一言が、私にとって大きな救いになりました。
検査後、実際に痛みが出たときも、処方された薬で乗り切ることができたからです。
では、その他にどんな準備が必要なのでしょうか?
🍽️ 絶食や飲水の制限
造影CTや胃カメラ・大腸カメラなどの検査では、検査前の食事・水分制限がある場合が多く、守らなければ正確な検査ができません。
採血検査で一部の項目(血糖・中性脂肪など)にも絶食が求められることがあります。
病院の指示は細かくても、必ず守ることが大切です。
💊 下剤の使用と食事制限
大腸カメラの前日や当日は、下剤の服用とともに低残渣食(消化の良い食事)を指示されることもあります。
これを怠ると、腸内がきれいにならず再検査になることもあるので、しっかりと準備して臨みましょう。
🔍 検査内容の確認
病院からの案内だけでは不安が残ることもあります。
そんなときは、信頼できる医療機関の公式サイトや、経験者の体験談などを併せて確認することをおすすめします。
「何をされるのか分からない」状態が一番不安を増幅させます。
あらかじめ情報を集めておくことで、心の準備も整います。
実際の費用目安(保険3割負担)
検査項目 | 費用の目安 | 備考 |
---|---|---|
胃カメラ🧫 | 約4,500円 | 自費なら10,000~20,000円 |
大腸カメラ🧩 | 約8,000~18,000円 | ポリープ切除で最大33,000円 |
造影CT🍀 | 約8,000~10,000円 | 自費で30,000円以上も |
マンモグラフィー🎗️ | 約4,500円 | 自治体検診なら安価に受診可 |
腫瘍マーカー血液検査🧪 | 1項目あたり2,000~5,000円(自費) | 複数組み合わせで実施されることが多い |
腹部超音波検査(エコー)🔎 | 約1,500円〜2,500円前後 | 通常6時間以上の絶食が必要 |
※金額は目安であり、医療機関や地域によって異なります。
看護師として伝えたい「検査を受ける意味」
看護師として数多くの患者さんと接してきて、心に残っている言葉があります。
それは、
「もっと早く検査していればよかった」という、後悔の声です。
がんが進行してから病院を受診し、手遅れになってしまったケースも少なくありません。ご本人もご家族も、やりきれない想いを抱えて治療に臨んでおられる姿を、私は何度も目にしてきました。
でも、私たちはどこかで「自分は大丈夫」と思ってしまいます。
健康なときには、自分が病気になる未来なんて想像できないものです。
けれど、ここでひとつ、わかりやすいたとえを出してみましょう。
🚗 車には“車検”があるのに、体の点検は後回し?
私たちが日々乗っている自動車は、2年に1度の車検が義務づけられていますよね。ブレーキの効き具合やエンジンの調子など、安全に走るための点検が行われます。
それに比べて、人間の体には“車検”がありません。
放っておいてもエンジンは止まらない。けれど知らないうちに、どこかが摩耗し、見えないところで不具合が進んでいるかもしれません。
自動車は、故障したら部品交換で直すことができます。
でも、人の体は、交換のきかない“一台限り”の車なのです。
だからこそ私は、「がん検査」は自分の体を守るための定期メンテナンスだと考えています。
「なんとなく不調があるけど、仕事が忙しいから」「まだ若いし大丈夫」
——そうやって先延ばしにしていた人が、ある日突然「ステージⅣ」と告げられることもあります。
どうか、あなたにはそんな思いをしてほしくありません。
検査を受けることは、怖いかもしれません。
でも、知らないままでいることのほうが、もっと怖いこともあると、私は伝えたいのです。
「知らないまま」は、もっと怖い
がんは、早期であればあるほど治療の選択肢が多く、体への負担も軽く済む病気です。
たとえば——
- ステージ0やⅠの乳がんなら、部分切除で済むことがありますが、
ステージⅢやⅣになると、乳房の全摘や抗がん剤、放射線治療が必要になる場合が多くなります。 - 大腸がんの初期であれば、内視鏡でポリープを切除するだけで完治することもあります。
しかし、進行してから見つかれば、人工肛門(ストーマ)の装着が必要になるケースもあります。 - さらに、がんが他の臓器に転移していた場合、根治が難しくなり、延命や緩和を目的とした治療に切り替わることもあります。
治療の内容が変わるということは、生活の質(QOL)にも直結します。
仕事を長期に休まなければいけなくなったり、好きな食べ物が食べられなくなったり、日常生活に大きな制限がかかることもあります。
そして何より——
「もっと早く検査していれば…」
「この治療法が選べたのに…」
そんな“もしも”の後悔は、あとから取り戻すことができません。
だからこそ、私は強く伝えたいのです。
「知ること」は、あなた自身の未来を守るための選択です。
知ることで選べる未来が広がる
がんは「早期発見」が何より重要だとよく言われます。
その理由は、早く見つけることで私たちが取れる選択肢が格段に増えるからです。
反対に、見つかるのが遅れてしまえば——
選べる治療が限られたり、生活そのものが制約されたりすることも少なくありません。
そして、“知る”ということは、ただ病気の有無を判断するだけではありません。
これからの人生を、自分の意思で選んでいくための「地図」を持つことでもあります。
では、早く知ることで私たちが得られる「未来の選択肢」には、どんなものがあるのでしょうか?
🍀治療の選択肢が増える
早期発見であれば、手術・放射線・内視鏡治療など身体への負担が少ない選択肢が選べる可能性が高くなります。
🍀生活の質(QOL)を維持できる可能性が高まる
通院回数や副作用の軽減など、治療と日常生活の両立がしやすくなります。
🍀「自分は大丈夫」と安心して生活できる
検査によって何も見つからなければ、それは大きな安心材料になります。不安を抱えたまま過ごすより、よほど前向きに生活を送ることができます。
「検査を受ける=怖いこと」ではなく、「自分の未来を守る選択肢を持つこと」だと、私は信じています。
私が受けた遺伝子診断と、その後の話
私は20歳のときに遺伝子診断を受け、「がんになりやすい体質」と言われました。
そのときは、まだ若くて、どこか遠い話のようにも感じていましたが、それでも「自分の体を知る」ことの意味は、どこかで意識に残っていました。
毎年検査を受け、自分の体調を客観的に見つめてきました。
そして40代、実際にがんが見つかりました。しかも、注意していたがんではなく希少ながん「尿管がん」
それでも、私は取り乱すことはありませんでした。 心の準備があったからこそ、受け止める力があったのです。
検査を受けることは、未来の自分を支える“もうひとりの自分”を作っておくようなもの。だからこそ、私はこれを多くの人に知ってほしいと思いました。
「今、知っておくことは、未来のあなたを助けてくれます。」
おわりに
がん検査を受けようかどうか悩んでいるあなたへ🌨️
その迷いは、きっと「命を大切にしたい」という思いの現れです。
どうか、その思いを無視しないでください。受ける・受けないを選ぶのはあなた自身ですが、「知ること」は未来の選択肢を広げる力になります。
検査は、怖いものではありません。知って、向き合って、守るための準備です。
この記事が、あなたの一歩をそっと後押しできたなら、これ以上にうれしいことはありません。