【本記事は「がん患者あるある」シリーズ第2回/全6回の連載企画です】
がん治療って、心だけじゃなく体にも確実に変化をもたらしますよね。 看護師として「ボディーイメージの変化」という看護問題を立案して患者さんに指導や助言、不安についてお話を聞いていました。
しかし、自分が患者になって「ボディーイメージの変化」はとても気になるものだと感じました。
今回は「体の変化あるある」を10選にまとめました。少しでも共感したり、「ああ、自分だけじゃないんだ」と思ってもらえたら嬉しいです。
1.手術の傷あとが残る
2.体力の衰えに愕然とする
3.脱毛はなくても「脱毛への備え」はある
4.食生活の変化で“健康のありがたみ”を痛感
5.天気に敏感になる
6.昼間に寝ても眠れる
7.服にも気をつかうようになる
8.ボディーイメージの変化に戸惑う
9.シャワーやお風呂が怖い
10.自分の体と“対話”するようになる
【がん患者|体の変化あるある10選】
1.手術の傷あとが残る
私は腹腔鏡手術だったため、右脇腹からお腹にかけて小さな傷が4か所。そして、右の腎臓を取り出した12cmの大きな手術痕が下腹部にあります。太く盛り上がったミミズのようなその傷は、今でも触れても神経が切られているためか、感覚が鈍くなっています。
手術後は腹筋に力が入れられず、お腹が少し出ているような感覚も…。よく手術の傷を「治療の勲章」と聞くこともありますが、やはり自分の体に傷があることは悲しいです。
特に女性では、乳がんの手術後や腹部の傷にはとてもセンシティブになってしまいますよね。
命の引き換えにできてしまった傷…よく頑張ったとほめてあげたいものです!
2.体力の衰えに愕然とする
手術に備えてラジオ体操やスクワット、ランニングをしていたのですが、手術後はどうでしょう、まったくの筋力の低下に愕然としました。
手術創の痛みがあると体を動かせず、どんどんと体力が落ちていきますね。患者になって改めて、術後の早期リハビリは大事名だと感じました。
退院後、ラジオ体操すらしんどい状態でしたが、少しずつリハビリを兼ねてウォーキングを始め、今は腹筋を鍛えています。次の治療に備えて、自分の体を少しずつ立て直さなければいけません。
3.脱毛がなくても「脱毛への備え」はある
私は化学療法による脱毛は経験していませんが、治療前には「脱毛するかもしれない」と思って短髪にして備えました。髪は見た目の変化が最も分かりやすく、患者さんにとってとても大きな問題です。
男性の私でも脱毛にて頭皮が薄くなるんじゃないかと不安でした。
女性の心は分りませんが、美容院にいくことを考えると髪の毛を失うのは言葉では言い難いぐらいにつらいと思います。
4.食生活の変化で“健康のありがたみ”を痛感
BCG治療後は血尿と排尿痛で水分摂取が辛くなり、つい控えてしまいました。でも、水分は体にとって重要だと改めて実感。
片方の腎臓を失ったことで、血液検査の値にも影響が出るようになり、食生活にはかなり気を遣うようになりました。塩分・カリウムの制限など、制約の多さを痛感しつつ、「なんでも食べられる日常って幸せだったな」と思います。
5.天気に敏感になる
雨の日は右腹部の手術痕がうずいたり、寒い日は鈍い痛みが出たりします。以前はまったく気にもしなかった天気や気温が、今では体調に直結する感覚です。
暖かい季節が一番心も体も穏やかに過ごせます。夏はどうなんだろう…と今から少し不安です。
6.昼間に寝ても眠れる
病院入院中は暇だろうと本を持ち込みましたが、手術後は体力が低下し体自体が休息を求めているのかよく寝ました。結局、本を読み切ることなく荷物になってしまいました。
午後は必ず昼寝をしていました。寝ることはやはり体力の回復には必要なはずです。
入院って仕事も家事も育児もしなくて、自分の体を癒すことができるから素晴らしいです。昼寝して体を休めてください。
7.服にも気をつかうようになる
私はあまり服装に頓着しないタイプですが、それでも術後の傷を守ってくれる服には安心感を覚えます。
傷の部分に物が当たったらどうしよう、ガードしないと…そんな時に活躍したのが腹帯です。腹帯をしているからこそ無理はできないんだ!という気分になりました。
同様に胸に巻く胸帯も乳がん術後や肺がん術後に傷を守ってくれる大切な服の一部です。
女性のがん患者さんにとっては、術後の体形の変化や補正下着なども含め、服選びがとても重要なテーマだと、患者さんから聞いたことがあります。
8.ボディーイメージの変化に戸惑う
私自身には強い外見の変化はありませんでしたが、乳がんなどの手術で体の一部を失った患者さんの苦悩を目の当たりにしてきました。
「病気が見た目に現れてしまう」ということは、想像以上に心の負担になるんだと感じています。
化学療法で吐き気が強く食べられない、口内炎が痛くて…味覚が変わってしまって・・・
抗がん剤の影響なのか、皮膚の色が浅黒くなり老けてしまったみたい…
9.シャワーやお風呂が怖い
手術直後、「水が傷口にしみるんじゃないか」と、お風呂に入るのが怖くなりました。
実際、抜糸前後はガーゼで覆ったり、シャワーを直接かけないように工夫していました。
でも、そのぶんお風呂に入れるようになったときの喜びは格別。
「私、またここまで回復したんだ」と実感できる瞬間です。
今では、お気に入りの入浴剤を使って、心と体を労わる時間にしています。傷は温めると痛みも和らぎます。
今は、スーパー銭湯にきサウナに入って整っています。
10.自分の体と“対話”するようになる
ちょっとした違和感にも「何かのサインかも」と耳を傾けるようになりました。
以前は、少しの痛みなんて無視して過ごしていましたが、今では「お、今日は腎臓のあたりが重いぞ?」「手がむくんでいるような気がするな」など、体の声に敏感です。
それは不安でもありますが、自分としっかり向き合っている証拠でもあります。
【まとめ:変化は「終わり」じゃなく「始まり」かもしれない】
がん治療によって起こる体の変化は、最初こそ受け入れがたいものでした。
でも、少しずつ、少しずつ「これが今の私なんだ」と認められるようになってきました。
変わったのは体だけではなく、“自分との向き合い方”。
今ある体をいたわり、未来に向けて少しでも元気に生きていこうと思えるようになった――そんな小さな一歩を大切にしていきたいと思います。
次回は「治療あるある編」。治療中のあるあるや思わぬ発見を紹介します。お楽しみに!