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第7話:がんが教えてくれた「働く意味」

この記事を書いた人:くるみん

がんサバイバー×看護師。療養と生活のリアルを発信中。
「前を向きたい人の、灯りになれるブログ」を目指しています。

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がんになって「よかった」


がんになって「よかった」なんて、私はやっぱり言えません。
抗がん剤の副作用、繰り返す検査、不安な夜…そんな中で、心も体もすり減って、「なんで私が」と何度も思いました。

でもそれでも、がんになったからこそ見えた世界があります。

それは、がんにならなければきっと気づけなかった——
自分自身のこと、家族のこと、人とのつながり、生きるということの重み。

このシリーズでは、「がんを経験したからこそ感じた10の気づき」を、ひとつずつ丁寧に綴っていきたいと思います。

無理に前向きにならなくてもいい。
でも、もし心のどこかで「何かを感じてくれた」なら、それはきっと、同じように闘っている誰かの光になると信じています。

「がんを経験したからこそ感じた10の気づき」第7話は、がんが教えてくれた「働く意味」についてお話しします。

🛑 告知の瞬間、立ち止まるしかなかった

「もう、自分の人生は終わったんだな」と思ったのは、50歳手前のある日。がんの告知を受けた瞬間でした。
頭の中をよぎったのは、自分の身体のこと、家族のこと、そして何より「仕事」のことでした。

そのとき私は訪問看護ステーションを立ち上げて3年目。社員も増え、利用者さんも増えてきたタイミング。順調と言えば順調。だけど、それは全力疾走を続けていた状態でもありました。

銀行からの借入は1000万円以上。365日、24時間オンコール対応。家族との時間を犠牲にしてでも、事業にフルコミットしてきた。そんな矢先のがん告知。

「続けられるのか?」「利用者さんに迷惑をかけないか?」「社員やその家族の生活は?」
頭の中が不安でいっぱいになり、心の奥から、静かに崩れていく感覚がありました。

💼 仕事に飲み込まれ、自分を見失っていた

🧠 仕事=自分、になっていなかったか?

訪問看護ステーションを開業するまでは、仕事6割・プライベート4割くらいのバランス。家族と旅行したり、ちょっと贅沢をしたり、そんな日々もありました。

でも、開業後は比率が0.5:9.5に。旅行どころか、スマホを常に携帯し、深夜に呼ばれればすぐに対応。経営・営業・人事・経理、すべて一人でやる毎日。まさに仕事漬けでした。

やりがいは確かにあった。「ありがとう」という言葉に何度も救われた。
でも、心のどこかで「休みたい」「家族と過ごしたい」「旅行にも行きたい」と願う自分がいたのも、また事実です。

そんな自分の声を、ずっと無視していたのかもしれません。

🕰 病気がくれた“強制終了”の時間

🏥 入院がもたらした、静かな再起動

がんの診断を受け、通院・検査・手術と進む中で、スケジュールは強制的に変わりました。
あれだけ埋まっていた訪問の予定表は真っ白になり、代わりに「手術日」「入院」「検査日」の文字が並びました。

約3週間、病院のベッドとリハビリの時間を過ごし、そこでようやく、心にも「立ち止まる」余白ができたのです。

最初は早く復帰したい一心でリハビリに励んでいました。でも、次第に気づいたんです。

「何のために働いていたんだろう?」
「誰のために?」
「この働き方に、私は納得していたのか?」

そんな問いが、頭から離れなくなりました。

🔍 働き方ではなく、生き方を見直した

経営者としての責任は重く、精神的にも限界に近かった。経営状態も芳しくなく、常にプレッシャーに追われていました。
正直、ストレスからがんになったとしても不思議ではない。そう思えるほど、毎日は消耗していました。

だから、思い切って決断しました。
「もう、やめよう」と。

訪問看護ステーションを閉じる決意は、簡単ではありませんでした。多くの人に迷惑をかけてしまったことは今でも胸に残っています。
でも、それ以上に、自分の人生を取り戻したいという想いが強かった。

車はSUVから中古の軽自動車へ。社長から一社員へ。
でも、その選択が私の心を、驚くほど軽くしてくれました。

🌈 人生は、何度でも選び直せる

⏳ 「いつかやろう」は、もうやめた

がんと診断されたことで、「いつか」は来ないかもしれないという現実を突きつけられました。

でも、治療が一段落し、転移や再発もないとわかった今、私は「今やろう」と決めました。

初めてのコンサートに行ったり、家族といちご狩りに行ったり。
息子とバイクで北海道を走る夢も、現実になりそうです。
スペインのサグラダ・ファミリアにも、必ず行きたいと思っています。

やりたいことは、数えきれないほどあります。だからこそ、目標を「今年中に」「この夏に」と期限をつけるようにしました。
親友とウルフギャングのステーキを食べに行く、高層階のバーで夜景を見ながらウイスキーを飲む、そんな些細な夢も、今では生きる原動力です。

🧭 自分のペース、自分の価値観で生きるということ

私は変わりました。
がんが、私を変えてくれました。

もう無理はしない。
嫌なことはしない。
大切な人と笑って過ごす。
ものより思い出にお金を使う。
SNSで発信して、誰かの気づきになれたら、それで十分。

私は今、看護師として再スタートを切りました。前ほど責任を背負いすぎることもなく、自分のペースで働いています。

誰のためでもない、「自分のために生きる」。
それが今の、私の新しい働き方であり、生き方です。

❓ あなたは、何のために働いていますか?

病気は確かに、つらく苦しいものでした。
でも同時に、私に「立ち止まるチャンス」を与えてくれました。

仕事や役割を見直すことで、本当の自分の声が聞こえるようになったのです。
今は、もっと自分らしく、もっと心地よく、生きていこうと思っています。

あなたは、何のために働いていますか?
もし少しでも迷いや違和感を感じているなら——
立ち止まることを、恐れないでください。

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