「セルフハグで心を癒す｜人のぬくもりが恋しい時にできる、やさしい習慣」

はじめての「ハグ」はカナダでだった

30年前、僕はカナダのバンクーバーに語学留学をしていました。初めての海外、初めてのホームステイ。迎えに来てくれたホームステイマザーは、トルコ系カナダ人の温かな女性でした。

空港のゲートを出た瞬間、大きく広げた両腕と満面の笑顔で迎えてくれた彼女。その腕に包まれた瞬間、異国の地での不安や緊張がふっと和らいだのを、今でもはっきり覚えています。

それからの滞在中、彼女は何かあるたびにハグをしてくれました。朝の「おはよう」、出かけるときの「行ってらっしゃい」、そして夜の「おやすみ」。ハグが感情を伝える手段として、生活の中に自然に溶け込んでいたのです。

僕はすっかりその文化に魅了されました。そして帰国後、駅で迎えに来てくれた母に、今度は僕が大きく手を広げてハグをしました。驚いた母の顔が、今でも心に残っています。

ハグって、なんでこんなに癒されるの？

人は誰かと触れ合うことで安心感を得る生き物です。特に、ハグのような“抱きしめる”行為は、科学的にも癒しの効果があるとされています。

その理由のひとつが「オキシトシン」の分泌です。オキシトシンは別名“愛情ホルモン”とも呼ばれ、ハグやスキンシップによって分泌されます。このホルモンは、ストレスの緩和や不安の軽減、心拍数や血圧の安定に関与していることがわかっています。

さらに、免疫力の向上にも関係しているという研究もあり、まさに“触れること”が私たちの心と体に深く関わっているのです。

くるみん

がん患者さんの免疫力をUPするためには、積極的なハグがよさそうですね！
“Give me a hug”「ハグしてちょうだい！」

日本ではハグはまだ“特別なこと”？

カナダでは日常的なハグですが、日本ではまだハグをする文化は根付いていません。家族や恋人同士でさえ、日常的にハグをする人は少ないかもしれません。

僕自身はカナダ以来、その温かさが忘れられず、毎朝妻にくっついてハグをしています。もう20年経ちますが、毎朝のその“ぬくもり”は、僕にとって大切な心のスイッチです。

ただ、妻からは「もう～、毎朝うっとおしい！」と苦笑いされることもあります（笑）。

それでも、やっぱりハグには力がある。そう感じているからこそ、僕は日本でももっとこの文化が広がればいいなと思っています。

20年も事あるごとに続けているハグだけど、毎回うっとおしい顔をされます。
だけど自分の体の中では、オキシトシンがドバドバと出ているはず！

ひとりでもできる“セルフハグ”という選択肢

「でも、ハグしてくれる人がいないときはどうすればいいの？」

そんなときに、僕が紹介したいのが“セルフハグ”です。

セルフハグとは、その名の通り「自分で自分を抱きしめること」。やり方は簡単です。

【1秒でできるセルフハグのやり方】

1.　両手をクロスして、自分の肩や胸を優しく包み込む

2.　そのまま目を閉じて、ゆっくり深呼吸

3.　心の中、あるいは声に出してこう言ってみましょう
「よく頑張ってるよ」 「大丈夫、大丈夫」 「ありがとう、自分」

まるで、誰かに優しく抱きしめてもらっているような、不思議な安心感が広がっていきます。

セルフハグの科学的根拠

実は、セルフハグにもちゃんと効果があることが科学的に示されています。

2022年に発表されたドイツの研究では、「セルフタッチ（自分で自分を触れる行為）」によって、不安やストレスが軽減されることが報告されています。脳は、実際に誰かに触れられたときと似たような反応を示し、副交感神経が優位になることでリラックス効果が生まれるのです。

つまり、セルフハグは“疑似的なスキンシップ”でありながらも、脳と心にはしっかり作用してくれる立派なセルフケアの一つなのです。

自分を労わる、新しい習慣として

日々、誰かのために頑張っているあなた。人のことは気にかけても、自分のことは後回しになっていませんか？

そんなあなたに、毎晩寝る前のセルフハグをおすすめします。

今日も頑張った自分に、やさしく両腕をまわして「ありがとう」と伝えてあげるだけで、きっと心がほぐれていくはずです。

最後に──あなたは、いつ自分をハグしましたか？

もし今、ちょっとだけでも疲れていたり、誰かに抱きしめてほしい気持ちがあるなら、どうか自分で自分を抱きしめてみてください。

人の手じゃなくても、あなたを支える力は、あなたの中にちゃんとあります。

セルフハグは、いつでもどこでもできる「自分への優しさ」です。今日から、あなたの新しい習慣にしてみませんか？