🕊️朝の時間、なぜこんなに不安なのか?
がんと診断された直後の朝ほど、重くて苦しい時間はなかったかもしれません。 目が覚めた瞬間、胸の奥がざわざわする。 頭では「また今日が始まった」とわかっているのに、心と体がついてこない。
夜は夜で、「がんとこれからの人生のこと」が頭の中をぐるぐるしてしまって、寝つきも悪くなりがち。 そんな夜を過ごした朝は特に、不安という名の霧の中で目を覚ますようでした。
私の場合、そんな朝の不安を察してくれた妻が、同じ部屋に布団を敷いて、そばにいてくれました。 どうしようもない不安に飲み込まれそうな朝には、妻の布団に潜り込み、そっと手を握ってもらう。 そのぬくもりが、布団から出るためのエネルギーになったことを今でも覚えています。
不安は「心」の問題だと言われがちですが、実際は胸の奥の「体の感覚」にまで波及します。 そして、その正体には、私たちの体に備わった“仕組み”も関係しているのです。

🧠なぜ朝の不安はこんなにも強く感じるのか?
💊ストレスホルモン「コルチゾール」の急上昇
朝方に分泌される「コルチゾール」は、交感神経を活性化させ、体を目覚めさせる働きを担っています。 ですが、がんと向き合っているときは、このホルモンが過剰に作用し、不安感や焦燥感として現れることがあります。 まさに「目覚めとともに不安も目を覚ます」ような感覚になるのです。
🔄交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかないと…
夜はリラックスの神経「副交感神経」が優位になり、朝から昼にかけて「交感神経」へと切り替わります。 この切り替えがスムーズにいかないと、自律神経が乱れ、目覚めた直後に強い不安や動悸、胸の重さを感じることがあるのです。
💓不安は「頭」より先に「胸」にくる?
「不安を感じているのは心なんだけど、なぜか胸の奥がざわつく」 これは、自律神経の反応が内臓感覚(内受容感覚)として現れている証拠。 言葉にできない感情が、体の奥に沈殿している状態です。 特にがんと診断された直後は、「命」というテーマに向き合うため、不安が身体感覚として強く現れやすくなるのです。


🌥️がん患者の「朝の不安」にはどんな特徴があるのか?
🛌起きた瞬間に押し寄せる「命の不安」
がん患者の朝の不安には、漠然とした不安ではなく、“命に直結する不安”が重くのしかかります。 「再発していたらどうしよう」「この先、本当に生きていけるのか」。 目を覚ました瞬間、無意識に頭の中が“がんモード”に切り替わってしまうのです。

めを覚ました瞬間から不安が押し寄せてくるのは本当に辛かったよ
🩺体のだるさや違和感が「不安のスイッチ」になる
「なんか今日はだるいな」「この痛み、いつもより強いかも?」 その小さな違和感が、「もしかして再発…?」といったネガティブ思考を連鎖的に呼び起こします。 身体感覚が鋭くなる時期だからこそ、ちょっとした痛みや不快感にも過敏に反応してしまうのです。
⏰「起きる理由」があるかどうかで大きく変わる
私の場合は、診断から手術まで1ヶ月以上あり、その間は仕事を続けていたので、起きる時間が決まっていました。 「とにかく起きなきゃ。行かなきゃ」 行動に助けられて、不安を感じる間もなく、スイッチを切り替えることができた日も多かったんです。

仕事はマストだったから休むこともできなかった、逆にそれが起きる理由だったので仕事の日は良かった
一方で、休日の朝など、特に予定のない日はベッドの中で過ごす時間が長くなり、不安に包まれる時間も長かったように思います。 「起きる理由」があるかどうかは、朝の不安の強さに大きく関わってくるのだと、今振り返って改めて実感します。
👥「人の存在」が安心感をくれることもある
妻が同じ部屋にいてくれたことで、朝の不安は少しだけ和らぎました。 誰かの気配、ぬくもり、手を握ること。 それだけで「ひとりじゃない」と思える瞬間が生まれ、不安に飲み込まれそうな朝を乗り越えられるのです。

🛠️朝の不安を和らげる7つの方法
- 🧩朝の“ルーティン”を決めて、心に落ち着きと安心感を与える
がんという不確かな状況の中で、「これをやれば大丈夫」というお決まりの行動は、心の安定につながります。私の場合は、がんになる前からの習慣として、起きたらすぐにベッドメイキングをしていました。その行為自体が、一日が始まる“儀式”のような役割を果たしてくれていたのです。朝起きてカーテンを開ける、白湯を飲む、いつもの音楽を流す——それだけでも「今日が始まる」安心感をつくれます。 - 🏃♂️“思考”ではなく“行動”にスイッチを入れる
不安な気持ちに支配されやすい朝は、頭で考えすぎる前に、体を動かすことで気持ちが切り替わることがあります。「顔を洗う」「歯を磨く」「着替える」などの動作が、不安のループを断ち切るきっかけになります。私にとっては、仕事に行くための準備をすることがよいきっかけになっていました。不安だからといって何もせず布団の中にいると、経験上、不安がさらに膨らんでしまうことが多かったのです。 - 🎵優しい音や香りを取り入れて、自律神経を整える
朝に自然音やヒーリング音楽を流したり、柑橘系の香りを漂わせたりすることで、交感神経と副交感神経の切り替えがスムーズになります。心が落ち着き、深呼吸がしやすくなる効果があります。環境音は少しずつ目を覚ませてくれ心地よく起こしてくれます。 - 🗣️自分にかける“言葉”を変えてみる
目覚めと同時に「また不安な朝だ」と思ってしまうこともありますが、そんな時こそ「大丈夫」「今日は今日のペースで」と、自分を励ます言葉を声に出してみましょう。自己肯定の習慣は、不安への耐性を高めてくれます。 - 📝「書き出すこと」で、不安に名前をつける
頭の中にある不安は、言語化することで整理され、客観視できるようになります。私自身も、妻に「不安だ不安だ」と言っていたとき、「何が不安なのか書き出したらいいじゃない」と言われました。試しに書いてみると、漠然としていた不安が少しずつ具体的になり、「これは今できることがある」「これはまだ考えなくていいかも」と区別できるようになったのです。手帳やスマホに「今、何が不安なのか?」を一言でも書いてみることで、不安と向き合うヒントが見えてきます。 - 📵SNS・ニュースとの距離感を少し変える
朝からSNSやニュースを見ることで、過剰な情報が心をかき乱すことがあります。とくにがんの話題や他人の闘病記がトリガーになることも。私は心を休めるために、事件や事故などのニュースを見ないようにしていました。とりあえず自分の精神の安定を優先させ、他の刺激はもらわないようにしていたのです。 - 🫂不安が強いときこそ、誰かの存在を頼っていい
「誰かにそばにいてもらう」「手を握ってもらう」ことは、何よりも安心感につながります。がんばって一人で起きようとせずに、誰かを頼ること自体が、心の安定につながる大切な行動です。
ただし、ひとり暮らしの方や身近に頼れる人がいない場合には、別の工夫も有効です。たとえば、ぬいぐるみやクッションなど、温かみのあるものを抱きしめるだけでも安心感が得られます。
それでも、安心感が得られないようなら、”セルフハグ”がおすすめです。自分で自分を”ギュっ”と抱きしめてあげてください。

🌱朝の不安は「あなたのせい」ではない
不安は、心が生きようとしている証拠。 それは決して恥ずかしいことでも、弱さでもありません。
朝、目を覚まし、起き上がる—— それだけのことが、がんと向き合う私たちにとっては、とても大きな一歩。
完璧に乗り越えようとせずに、不安を受け止め、少しでも楽になれる方法を見つけていけたら。
明日の朝、少しだけ自分に優しい言葉をかけてみませんか?
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