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がんと診断されたとき最初にしてよかった4つのこと

この記事を書いた人:くるみん

がんサバイバー×看護師。療養と生活のリアルを発信中。
「前を向きたい人の、灯りになれるブログ」を目指しています。

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看護師である私の体験と気づき


見出し

1.感情を吐き出す相手に話す

 ・信頼できる人の存在が、心の支えになる

 ・母と妹、同じがんサバイバーだからこその葛藤

 ・親友たちがくれた言葉と時間の価値

2.自分の状態を正確に知る

 ・「知ること」は、未来への第一歩

 ・自ら情報収集してみる

3.今後の選択肢を考える時間を作る

 ・「焦らず、自分を守る時間の選択をしてほしい」

 ・自分の時間を確保することの大切さ

4.治療に向けた情報収集を始める

 ・知らないことへの不安は、“知ること”でやわらぐ

 ・SNSで得た経験者の声に助けられて

1.感情を吐き出す相手に話す

信頼できる人の存在が、心の支えになる

「一人じゃない」と思えるだけで、心は救われる
がんと診断されたとき、最初にその事実を伝えたのは妻でした。


実は、妻に話すまでにも少しだけ迷いがありました。
「どう伝えようか」「動揺させてしまうのではないか」――そんな思いが頭を巡りました。


それでも、一番近くにいてくれる人だからこそ、最初に伝えようと決めたのです。
血尿が出ていたころから体の変化や不安を共有していた妻は、診断の日も一緒に病院へ来てくれました。


診察室で医師から「尿管がんで間違えないです」と言われた瞬間、私は頭が真っ白になり、先生の言葉も上の空で…
そんな中でも妻は冷静に説明を聞き取り、しっかりとメモを取り、私の支えになってくれました。

母と妹、同じがんサバイバーだからこその葛藤

そしてその後、母と妹にも打ち明けました。
母は47歳のときにがんを経験し、化学療法や手術を乗り越えたサバイバーです。妹も30代でがんの診断を受け、いまも治療を続けています。
そんな家族だからこそ理解してもらえると思っていたのですが、母は私のがんを知った途端、夜も眠れなくなったと打ち明けてくれました。


あのとき、「伝えない方がよかったのかもしれない」と一瞬思いましたが、それでも――やはり母には伝えてよかったと思っています。
真実を共有し、自分自身で責任をもって治療に向かう姿を見せることで、安心してもらえるからです。


妹からは「お兄ちゃん、大丈夫。きっと治るよ」と心強い言葉がありました。心の奥にじんと染みる励ましでした。
現在、がんの治療中である妹からの激励の言葉は本当に力ずよくうれしかったです。

親友たちがくれた言葉と時間の価値


そしてもう一つ、大切な存在がいます――“親友”です。


高校時代から30年来の付き合いになる友人に、LINEで久しぶりに連絡をしました。実は、ここ2年ほどやり取りがなかったのですが、私の一報に対してすぐに「会おう」と返事をくれました。


「俺には何もできないけど、話を聞くことならできる。いつでも連絡してくれ」
そう言ってくれた彼の言葉は、どんな治療よりも効いたかもしれません。
たとえ何もできなくても、“話を聞く”という姿勢だけで、こんなにも救われるものなのかと実感しました。


社会人になってから20年以上続いている別の親友も、LINEを送ったらすぐに「週末に会おう」と返してくれました。
会ってからは、がんの話だけでなく、訪問看護ステーションの経営のことやこれからの人生のこと――いろんなことを語り合いました。


「落ち着いたら、うまいもん食べに行こう」「旅行行こう」「スーパー銭湯でも行こうか」
そんな何気ない未来の話が、どれほど希望に満ちていたことか。


実際、手術前にはその友人と一緒にスーパー銭湯へ行き、ぬるめのお湯に1時間ほど浸かりながら、他愛のない話をし、ゆっくりとした時間を過ごしました。


それだけのことで、心が軽くなるのです。
親友という存在は、どんなときでも、何も言わずにそばにいてくれる。
仕事のこと、家族のこと、病気のこと――すべてをさらけ出せる相手がいることが、どれだけ心強いか。


だから私は、伝えたい。
がんの告知を受けたとき、ひとりで抱え込まないで。
信頼できる人に、まずは話してみてほしい。
言葉にするだけで、きっと心は少し軽くなるから。

2.自分の状態を正確に知る

「知ること」は、未来への第一歩


私は看護師として働いていたため、がんの診断を受けたときも、ある程度の知識はありました。
「診断名からして、おそらくこういう経過をたどるのだろう」
そんな“予測”はできましたが、いざ自分が“患者”という立場になると、それだけでは不安を拭いきれませんでした。


特に気になったのは、“予後”です。
「このがんはどれくらい生きられるのか」
「再発や転移の可能性は?」
それらを考え出すと、頭から離れなくなりました。


私が診断されたのは「尿管がん」でした。
調べていく中で、5年生存率が約70%、転移がある場合は50%を下回ることを知りました。
数字で見ると、希望のようにも見えるけれど、裏を返せば「2人に1人は5年以内に亡くなる可能性がある」ということでもあります。


やはり、ショックでした。


でも、調べることで「分かること」もたくさんありました。

自ら情報収集してみる

尿管がんが右側に発生した場合には、右の腎臓と尿管、膀胱の一部を切除する「腎尿管全摘術」という手術になること。
入院期間はおおよそ10日前後で、術後の経過が良ければ早めの退院も可能であること。
さらに、がんの進行具合や体力状態によっては「抗がん剤治療」が必要になること。


抗がん剤の情報を調べたとき、「GC療法」などという、まるで暗号のような名前を見かけました。
これは「ゲムシタビン(Gemcitabine)+シスプラチン(Cisplatin)」という2つの薬剤を併用した治療法で、進行性の尿路系がんに対して広く用いられているものだと知りました。


医療従事者である私でも、調べてみると知らないことはたくさんありました。


でも、ひとつひとつ情報を整理し、理解していくことで、少しずつ“見通し”が持てるようになります。
それが、不安に支配されがちな心を、ほんの少し落ち着かせてくれるのです。


不安は、「知らないこと」から生まれます。
だからこそ、「知ること」は、前に進むための第一歩。
もし今、がんと診断されたばかりで不安を抱えている方がいたら、どうか、
・信頼できる情報源から調べてみてください
・医師や看護師に遠慮なく質問してください
・必要ならセカンドオピニオンを受けてください


自分の状態を知ることで、治療の選択肢も広がりますし、何より「納得したうえで進める」という安心感が得られます。
「無知な自分」が悪いのではなく、
「知ろうとすること」こそが、未来をつくるのです。

3. 今後の選択肢を考える時間をつくる

「焦らず、自分を守る時間の選択をしてほしい」


がんと診断されたとき、私が真っ先に考えたのは「この先の治療にどう時間を使うか」でした。


私は当時、訪問看護ステーションの経営者として、連日フル稼働していました。オンコール対応も含め、心身ともにギリギリの状態。それでも「経営者だから頑張らなければ」と自分に言い聞かせていたのです。


でも、がんという現実に直面し、「まずは自分の命と向き合う時間を確保しなければ」と思い至りました。


そこで、すぐに信頼できる管理者の採用に動きました。幸いなことに、有能な方が見つかり、日常の管理業務をすべて委ねることができました。オンコール対応も少しずつ手放していきました。


その後、転移が見つかり、私は経営者としての立場を降りる決断をしました。


本当に苦しい選択でした。不安も大きく、残る負債のこと、子どもの学費のことも頭をよぎりました。
でも、「限られた時間を、どう生きるか」を考えたときに、「自分の人生を、悔いなく生きたい」と思ったのです。


がん治療には、体力も、時間も、心の余白も必要です。
仕事、責任、家族…どれも大切ですが、自分の命があってこそ。


「焦らず、まず自分の時間を確保してください」

自分の時間を確保することの大切さ


休職や時短勤務、病気休暇、何でもいい。職場と話し合いましょう。仕事は、意外となんとかなります。
私自身、大学生の子どもがいて、家計の心配もあります。それでも、「いま自分が元気で働ける未来」を優先して、治療と生活のバランスを整えるようにしています。

がんと診断されたとき、無理に答えを出さなくてもいい。
でも、自分のために「立ち止まって考える時間」は、何よりも尊いものになるはずです。

4.治療に向けた情報収集を始める

知らないことへの不安は、“知ること”でやわらぐ


がんと診断された時、最初に頭をよぎったのは「これから自分はどうなるんだろう」という不安でした。
私は看護師として医療の知識はありましたが、「患者」として自分の病気に向き合うのは全く違う感情でした。


尿管がんの手術を終えてから一か月ほど経った頃、膀胱への転移が見つかりました。そこから私は、さらに多くの情報を集め始めました。


調べていくうちに見えてきたのは、膀胱全摘出という選択肢でした。


その場合には「人工膀胱(新膀胱)」や、「回腸導管(尿路変更手術)」と呼ばれる術式があることを知りました。
さらに、もし左の尿管までがんが及んでしまったら、左の腎臓も摘出が必要になる可能性がある。そして両側を失えば、透析が必要になるかもしれない。


調べれば調べるほど、不安が大きくなることもあります。けれど、「全く知らない」ことが引き起こす恐怖よりも、「知っていて備えられる」ことの方が、心の準備になると私は感じました。


幸い、私の場合は膀胱全摘出ではなく、BCG療法(弱毒化した結核菌を膀胱内に注入し、免疫反応でがん細胞を攻撃する治療)が選択されました。

SNSで得た経験者の声に助けられて


私はX(旧Twitter)で自分の状態を発信しました。すると、同じ治療を受けている多くの患者さんたちから、思いがけないアドバイスや共感の言葉が届いたのです。


その中で、治療前に医師にお願いしておくとよい「座薬」の情報も得られました。
幸い、そのアドバイスは私にも効果があり、BCG投与後の痛みが半減しました。経験者の声は、やはり実践的で、力になります。


SNSの情報は“使い方”が大切だとかんじています。


Xでのつながりは本当に心強く、今の私にとって貴重な情報源です。
ただし、SNSには時に曖昧な情報や、医学的根拠が不確かな内容も混ざっています。


だからこそ、情報は鵜呑みにせず、自分で再検索したり、医師に確認することが大切です。


「情報収集は、心の防備になります」
がんに立ち向かうには、気持ちの準備も、知識の準備も必要です。
SNSのつながりや信頼できる情報を味方にして、一歩ずつ自分の治療と向き合っていきましょう。

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