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ジェネリック薬は効かない?そんな不安に医療者として伝えたいこと

この記事を書いた人:くるみん

がんサバイバー×看護師。療養と生活のリアルを発信中。
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はじめに

「この薬…なんか効かない気がするんです」

訪問看護や外来で、患者さんからそんな言葉を聞くことがあります。ジェネリック医薬品に切り替えたとき、あるいは薬局で説明を受けた後の不安な表情。「色が違う」「形が変わった」「錠剤が大きくなった」——そんな違いが、心に引っかかるのも無理はありません。

僕自身、医療者として「同じ成分で、同じ効果がある薬です」と説明しながらも、それで安心してもらえなかった経験があります。言葉だけでは届かない、心の不安がそこにはある。だからこそ、今日はジェネリック医薬品にまつわる“誤解と本当”について、一緒に考えてみたいと思います。

ジェネリック医薬品とは? 基本から解説

なぜ安い?その仕組みとは

「ジェネリック医薬品って、なんとなく安い薬…そんなイメージがあるけど、どうして安いの?」 そう感じている方も多いかもしれません。

実は、ジェネリック医薬品は「先発医薬品(オリジナルの薬)」の特許が切れた後に作られる薬です。先発薬は、長年かけて開発・研究・治験(人体での効果確認)を経て販売されます。そのため、価格も高くなります。

一方、ジェネリック薬は、そのデータや仕組みを参考にして製造されるため、大規模な研究を省くことができ、結果的にコストが抑えられるのです。

患者さん
患者さん

先生、先発薬ってそんなに高いんですか?ジェネリックのほうが安いし、効くならそっちがいいんですけど…

医師
医師

そうですね。実は先発薬って、開発に10年以上の年月と、平均2,600億円ものコストがかかるんです。

患者さん
患者さん

えっ…そんなに

医師
医師

そうなんです。研究や治験を何年もかけて行い、やっと1つが製品化されるんです。だから、その分どうしても価格は高くなります。でも、その研究データを活かして、後から開発されるのがジェネリック薬なんですよ

患者さん
患者さん

ななるほど…研究の積み重ねがあるから、ジェネリックも信頼できるってことなんですね!

先発薬との違いとは?

基本的に有効成分の種類・量・効果は同じです。違いがあるとすれば、形や色、添加物(飲みやすくしたり保存性を高めるための成分)、製造会社などです。見た目が違っても、中身は「同じ」と言えるのです。

効果や安全性に違いはあるの?

日本では、ジェネリック医薬品の販売前に、厚生労働省が定めた「生物学的同等性試験」に合格する必要があります。これは「体への吸収が先発薬と同じように行われるか?」を確認する試験です。

この基準に合格した薬だけが、市場に出回ります。つまり、「効かない薬」が流通することは、まずあり得ません。

「効かない気がする」の正体とは

見た目が変わると、なぜ不安になるのか?

人は「慣れたもの=安心」「知らないもの=不安」と感じやすいものです。 たとえば、いつものお気に入りのカップで飲むコーヒーと、紙コップで飲むコーヒー。中身が同じでも、味や安心感に違いを感じることがあります。

薬も同じ。形や色、名前が変わると、「なんだか違う薬を飲んでいる気がする」と不安になるのです。

プラシーボ効果とノセボ効果とは

薬の効果には、「信じる気持ち」も影響を与えます。

たとえば、「これはよく効く薬ですよ」と言われて飲むと、本当に症状が軽くなった——これがプラシーボ効果(偽薬効果)です。有効成分が含まれていなくても、「効く」と信じて飲むことで、症状が改善することがあります。

そしてその逆が、ノセボ効果です。

「この薬、大丈夫かな…」「副作用が出そう…」といったネガティブな思い込みが、実際に体に悪い反応を引き起こしてしまうことがあります。

たとえば、こんな場面

患者さん
患者さん

なんかこの薬、色が変わったし不安です

医師
医師

この薬これは同じ成分のジェネリック薬ですよ

患者さん
患者さん

(心の中)「やっぱり不安…効かない気がする…」

このように思い込んでしまうことで、

  • 本来、出ないはずの副作用を感じる
  • 症状が悪化しているように感じる

といった現象が実際に起きることがあるのです。

だからこそ、医療者は「薬の説明」だけでなく、「安心」も一緒に届ける必要があるのです。

医療者として伝えたいこと

不安に寄り添う言葉を選ぶ

ジェネリック医薬品を勧めるとき、「同じ成分です」とだけ伝えるのではなく、

医師
医師

「この薬は、胃に優しくなる工夫がされています」

医師
医師

「飲みやすいように添加物を調整してあります」

など、具体的かつ前向きな言葉を添えることで、患者さんの不安を和らげることができます。

逆に、「新しいジェネリック医薬品で…」「先発薬と変わりありませんよ」などの曖昧な説明は、不信感を招いてしまう可能性があります。

違いより「同じ」を伝える

形や色が違っていても、成分は同じ。そのことを、共感とともに伝えることが大切です。

医師
医師

「見た目が変わると不安になりますよね」
「でもこの薬も、国がしっかり安全性を確認していますよ」

と、“根拠ある情報”と“やさしい言葉”を一緒に伝えることで、信頼を築くことができます。

信頼が薬の効果を引き出す

看護師としての本音

正直に言えば、看護師である僕たちも、すべてのジェネリック薬を把握しているわけではありません。日々新しい薬が出るなか、情報のアップデートが追いつかないのが現実です。

それでも、目の前の患者さんに「この薬、大丈夫?」と尋ねられたとき、自分自身も納得したうえで説明ができるようにありたいと思います。

「この人が言うなら大丈夫」と思ってもらえる存在に

処方そのものを決めることはできなくても、患者さんに最も近い立場にいる看護師だからこそ、

看護師
看護師

「私も同じ状況ならこの薬を選びます」

看護師
看護師

「不安なことがあれば一緒に考えましょう」

と、そっと寄り添える言葉を届けたいと思うのです。

まとめ:薬に効いてほしいのは、あなたの人生を支えるために

ジェネリック医薬品は、成分的には先発薬と同等で、安全性も確保されています。

それでも、患者さんの「なんか違う」「不安」といった心の声には、しっかりと耳を傾けていきたい。そして、医療者自身も「自分はこの薬を信頼しているか?」と問い続ける姿勢が求められているのかもしれません。

薬が効くということは、症状を抑えるだけでなく、その人の生活や人生を支えること。そう信じて、これからも一人ひとりと向き合っていきたいと思います。

あなたは、薬を選ぶときに何を一番大切にしていますか?
効くこと、安全なこと、信頼できること…

もしよければ、あなたの考えも聞かせてください。
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