はじめに:このテーマは、誰にとっても他人事じゃない
「将来のためにVIO脱毛を考えています」
最近では、そんな声を20代や30代の方から聞くことも増えました。介護脱毛──つまり、将来介護を受ける時のためにアンダーヘアをあらかじめ処理しておくという選択です。
でも実際、「なぜそれが必要なのか?」と疑問に思う方も多いはず。
今回の記事では、訪問看護師として現場で実際に体験した“毛があることで起きた困難”と、それによって傷ついた利用者さんの声をご紹介します。
私自身も、看護や介護の現場に関わっていなければ、VIO脱毛の必要性をここまで強く感じることはなかったと思います。
また、最近では「親の介護を経験して、自分も備えたい」「将来、自分が介護されるときに迷惑をかけたくない」という理由から、若い世代がVIO脱毛に関心を持つケースも増えています。

年齢を重ねた自分の将来を感じつつ、今からの脱毛は確実にメリットがあると思います。

おしっこが飛び散る!? アンダーヘアが水流の邪魔になる現実
脱毛後のデメリットとして「尿が飛び散る」という話を耳にしたことはありませんか?
実際、毛があることで尿が1本1本の毛を伝い、思わぬ方向へ流れてしまうことがあります。おむつ使用時だけでなく、トイレでの排尿時にも飛散することがあり、実際にトイレットペーパーを便器に敷いて飛び散りを防いでいるという声もあります。女性にとっては、おむつよりも日常的な“トイレでの飛び散り”のほうが実感しやすいかもしれません。
特に、陰部の毛が濃い場合は尿の流れが分散しやすく、毛を伝いおむつから漏れてしまいシーツまで漏れてしまうことも。
一方で、脱毛していればそのような“毛伝い漏れ”が減り、飛散のリスクも下がることを実感するケースもあります。 また、一部の女性からは「VIO脱毛してから尿が飛び散りやすくなった」という声が聞かれることもあります。陰毛が尿の軌道を緩やかに整える役割を果たしていた可能性もありますが、これはすべての方に当てはまるわけではありません。尿道の位置や体の構造、排尿姿勢によって個人差が大きいため、一概に“デメリット”とは言い切れません。
医学的・看護学的見地からも、毛があることで排尿後の拭き取りが困難になったり、尿が毛に残って不快感や皮膚トラブルを引き起こすといった課題の方が大きいといえます。
「毛がないことで飛び散る」ではなく、「毛があることで拡散する」という視点も大切です。

VIO脱毛すると、おしっこが飛び散るという問題も。
現場のリアル:羞恥と不快の狭間で「ごめんね」
50代男性の方で、陰部から臀部にかけて毛が非常に濃い方がいました。
お腹をこわして下痢が続いたある日、おむつの中に広がった便が毛に絡みつき、洗浄に長い時間がかかってしまいました。
その間、男性は顔を背け、「ごめんね……悪いね……」と何度もつぶやいていました。
ケアされる側の羞恥と、ケアする側のつらさ。
毛がなければ、もっと早く、もっと負担の少ないケアができたかもしれません。
そしてもうひとつ。
バルーンカテーテルが挿入されていた利用者さんに、毎日の陰部洗浄を行っていたときのことです。ボディーソープを使って優しく洗うのですが、毛が多いと泡が広がりすぎて流すのに大量のお湯が必要になります。すると、おむつがそのお湯を吸いきれず、結果としてシーツやパジャマまで濡れてしまうことも。
利用者さんも「今日は濡れちゃったね……」と残念そうにしていたのが印象的でした。
濡らしてしまったのは看護師の技術不足の側面もありますが、素直、陰部洗浄しにくいのが本音です。

看護・介護の現場では泡が立ちすぎると洗い流すのに苦労することがあります。
そもそも陰毛は何のためにある?現代では必要なの?
陰毛は本来、摩擦から皮膚を守る・外部からの異物を防ぐという「防御」の役割を担っていました。
しかし、現代は下着や衣類がその役目を果たしています。
また、陰部は通気性が悪く、毛があることで湿気がこもりやすくなるため、 ・蒸れ ・カンジダや白癬(水虫)の発症 などのトラブルも引き起こします。
実際、私たち看護師が患部に軟膏を塗布する際にも、毛が邪魔になり「ちゃんと届いてる?」と不安になる場面は多くあります。
さらに、下腹部に手術痕がある場合や、ガーゼ・カテーテルの固定テープを貼る際にも毛が絡まり、テープの密着が悪くなったり、剥がすときに強い痛みを伴ったりすることがあります。
“守るために生えていたもの”が、現代では“妨げになるもの”になりつつあるのかもしれません。
介護脱毛のメリットとデメリットを整理してみよう
メリット
- 陰部が常に清潔に保てる:汚れが絡まりにくく、拭き取りや洗浄がスムーズになります。
- 感染症(白癬・皮膚炎など)の予防:湿気がこもりにくく、皮膚トラブルのリスクを下げられます。
- 蒸れや臭いの軽減:通気性がよくなり、不快感も少なくなります。
- 自分でも手入れがしやすい:老眼や体の可動域の制限があっても、清潔を保ちやすくなります。
- 羞恥心の軽減:介護されるときの「申し訳なさ」や「恥ずかしさ」が減ります。
- 処置のしやすさ:ガーゼ固定や薬の塗布、陰部洗浄がスムーズに行えます。
デメリット
- 脱毛に費用がかかる:医療脱毛やサロン脱毛は数万円〜数十万円かかることも。
- 完全に脱毛するには時間が必要:数回の施術が必要で、完了までに半年以上かかる場合も。
- 人によっては尿の飛び散りが起きる:脱毛によって尿の軌道が変化する場合があります。
- 毛がないことに違和感を覚えることも:人によっては「恥ずかしい」と感じることもあります。
毛がないことで守れるものがある:QOLと尊厳
「おしっこが漏れた」「うんちがついてしまった」──これは誰にとっても恥ずかしいこと。
でも、その“恥ずかしさ”が、毛があることでより強くなってしまうこともあるのです。
たとえば、排泄後の拭き取りで毛に絡んだ汚れが取れず、洗浄が長引くと、利用者さんは身動きがとれず、不快感と羞恥でいっぱいになります。
毛がないことで、洗浄時間が短くなり、感染のリスクが下がり、皮膚トラブルも減る。
そして何より、“早く、やさしく、きれいに終わるケア”は、介護を受ける人の尊厳を守ります。

誰にも訪れる介護問題。すこしでもお互いに気持ちよく、負担がないようにしたいと思いませんか?
まとめ:あなたが今日からできる“備え”とは?
介護脱毛は、ただの見た目の問題ではありません。
それは、未来の自分に対する思いやり。 そして、大切な人に負担をかけないための“静かな決意”でもあります。
「若いうちにやっておけばよかった」
そんな声を聞くたびに、私はこのテーマをもっと広めたいと思います。
あなたは、どう考えますか?
未来の自分のケアに、どんな準備をしておきたいですか?
🍀患者となった訪問看護師がデリケートゾーンの脱毛を勧めます。
