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がんの不安に寄り添ってくれた親友たち|30年の絆に救われた日

この記事を書いた人:くるみん

がんサバイバー×看護師。療養と生活のリアルを発信中。
「前を向きたい人の、灯りになれるブログ」を目指しています。

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「親友に、がんのことを伝える勇気がありますか?」

ふと、こんな問いが頭をよぎりました。

私は今、50歳を目前にしています。

振り返ると、高校生の頃から続く友情や、社会人になってから築いた信頼関係が、今の自分の支えになっていることに気づかされます。

がんの疑いが強まったある日、私はいてもたってもいられず、二人の親友にLINEを送りました。

ヤスシ。

高校時代からの友人で、価値観がまったくブレない男。

ヨコヤマさん。

元職場の同僚であり、がん看護に精通する看護師。

今回は、この二人とのやり取りを通して、心の支えとなる「本当の友人」について綴っていきたいと思います。


ヤスシの「会おう」の一言が、心に刺さった

ヤスシとは、30年来の親友です。

LINEのやり取りは続けていたものの、直接会うのはしばらくぶり。

「親友ということで…迷惑をかけるが…ごめん。どうやら尿管がんで精密検査はこれからだけど、あまりよくないらしい。かなり動揺しています。たまにLINEします」

私がそうメッセージを送ると、すぐに返事がありました。

「驚いています。いつでも連絡して」

しかし、心の整理がつかず、私はなかなか返信できずにいました。

そんな私の気持ちを察してか、翌日ヤスシからこんなLINEが届きました。

「今度、会って話をしないかい?」

ヤスシは、SNSよりも直接会って話すことに重きを置く男です。

言葉の裏に、どれほど私を気にかけてくれているかが伝わってきました。

そして日曜日、私たちは曇り空の下、スタバで会うことに。

コーヒー片手にテラス席で語り合った2時間。内容は多くを語りませんが、彼の表情や仕草から「大丈夫だよ」と言われているような安心感がありました。

私はあの時、涙をこらえるのに必死でした。

自分でも思っていた以上に心が張り詰めていて、親友の顔を見た瞬間に、その緊張の糸がほどけていくのを感じたのです。

「お互い、そんな年齢になったなあ」

ヤスシは、昔から「大切なものを変えずに持ち続ける」ことを信条にしています。

時代が変わっても、価値観を見失わない強さを持っている人。

私はどちらかというと、思い立ったら即行動タイプ。

そんな正反対の性格だからこそ、ジグソーパズルのようにピタリとはまり、30年の友情が続いているのかもしれません。

私はそのとき、将来への漠然とした不安に押し潰されそうでした。

家族のこと… 仕事のこと… お金のこと… …そして命のこと。

だけど、ヤスシの「会おう」というひと言で、自分が一人じゃないと実感できたのです。

友人と向き合うことで、自分とも向き合える

ヤスシと語った時間は、私にとって“心の中の鏡”のようなものでした。

自分自身がどうしたいのか、どこに向かっていきたいのかを見つめ直すきっかけとなったのです。

人は誰しも、不安や恐れに押し潰されそうになる瞬間があります。

だけど、そんなときに寄り添ってくれる友人がいるだけで、道の先に光が差し込むことがあります。

あの日のスタバの空気、コーヒーの香り、曇り空の色、ヤスシの静かな声。

そのひとつひとつが、今でも鮮明に心に残っています。


4ヶ月ぶりのLINEに救われた夜

もう一人の親友、ヨコヤマさん。20年来の付き合いで、元同じ病院で働いていた仲間です。

彼とは3か月に1度くらい食事をしたり、ふと思い出したようにLINEを送ったり。そんな関係が続いています。

がんのことを伝えようか迷っていた頃、4か月ぶりにこんなLINEが届きました。

「こんばんはお元気ですか?寒くなってきましたね。体調に気をつけてください。また食事にでも行きましょう!」

あのときは、まるで神様が助け舟を出してくれたように感じました。

私はすぐに返信しました。

「夏ごろから血尿があって、尿管がんの疑い。今、心がズタボロで…」

ヨコヤマさんは、さすが、がん看護に詳しいだけあって、言葉選びにも繊細な気遣いがありました。

「奥さんと話してくださいね。体のこと、家族のこと、仕事のことと気がかりが多いと思います。何かあれば話してください」

「私もいますので、何かあれば話してくださいね。」

この一言で、どれだけ救われたか知れません。

ヨコヤマさんの“距離感”がちょうどいい

医療従事者でありながら、ヨコヤマさんは“押し付けない”。

「仕事はどうしてるの?」 「無理せず任せられるところは任せて」 「気持ちが乗った時でも飯やお茶でもしましょう」

相手の気持ちを尊重しながら、そっと手を差し伸べてくれる。

これこそが、真の支えだと感じました。

看護師である私にとって、がんの進行度や治療法の選択についての知識は逆に“怖さ”を助長する要素にもなります。

だからこそ、誰かに話すことをためらってしまう。

でも、そんな私の気持ちを汲み取って、タイミングを見計らってくれる——そんな優しさに何度も救われました。

不安で眠れなかった夜、LINEの通知音が鳴るだけで胸が熱くなる。 「自分を気にかけてくれる人がいる」

その事実だけで、どれほど心が救われたか。


友情の価値を再確認した今、思うこと

がんという予期せぬ出来事は、生活も人間関係も一変させます。

でもその中で、「変わらないもの」もあります。

それが、友情。

数年会っていなくても、すぐに元通りに戻れる関係。

連絡が来ただけで、ホッとできる存在。

そして、こちらが言葉にできなくても、そっと気持ちを察してくれる人たち。

私は幸運にも、そんな親友が二人もいてくれました。

ヤスシとヨコヤマさん、いつも本当にありがとう。


あなたにも、そんな親友がいますか?

男同士で温泉に行こうぜ。 年をとったら、一緒に旅行でもしよう。

そんな未来の約束を、今だからこそ、心から楽しみにできるのです。

人生の後半に差しかかった今だからこそ、親友のありがたさが胸にしみます。

数年会っていなくても、いざというときに支えてくれる存在。

LINE一通で、心が救われる存在。

あなたにも、そんな親友はいますか?

もしいるなら、どうか連絡してみてください。

「久しぶり、元気にしてる?」 その一言が、相手を救う日があるかもしれません。

最後に

病気は、人生の転機を突然突きつけてきます。

だけど、そこで孤独にならないこと。

誰かとつながっていること。

それだけで、人生は少しだけ、あたたかくなります。

どうか、あなたの大切な人にも、「会おうよ」「話そうよ」と声をかけてみてくださいね。

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