はじめに
BCG治療が終わり、ようやく一段落ついた——そう思っていました。
ところが、安心したのも束の間、わたしの膀胱はひと段落どころか次のステージに移行しました。
それは、治療を終えたあとの生活にじわじわと影を落とす、思いがけない症状の始まりでした。

💬 BCG治療って?
「BCG治療」とは、膀胱がんの再発を防ぐために行われる治療法です。
結核予防のワクチンとして知られるBCGを、膀胱内に直接注入します。
これにより免疫反応を起こさせ、がん細胞を攻撃するよう働きかけます。
副作用として、排尿時の痛みや頻尿が起こることもあります。
BCG治療後の2週間後に現れた変化
BCG治療は計6回、無事に終えることができ、治療直後は特に大きな不調もなく経過していました。
ところが、2週間ほど経ったころから排尿時にヒリヒリとした痛みが現れ、次第にトイレに行く回数が増えてきました。
ドーンというような鈍い痛みではなく「刺すような痛み」です。もし体感するのであれば、トイレを最大限我慢して破裂しそうなぐらいの痛みと言ったらわかりやすいでしょうか。
しかし、尿意を感じてトイレに行っても、出る量は100mlほど。
「もう出ないはず」と思っていても、再び尿意を感じ、頻繁にトイレに出入りする自分に、戸惑いと焦りを感じていました。
造影CTでも問題ないとお墨付きをもらったのに、なぜ?
これは膀胱炎なのか?って
頻尿がもたらす日常生活への影響
この症状は、生活のあらゆる場面に影響を与えます。
特に困るのが「突然やってくる尿意」です。
水で手を洗うとき、シャワー浴の介助中、ステーションの駐車場に到着して車を降りた瞬間。
また、犬の散歩中に愛犬が片足を上げて排尿するのを見たとき、川沿いを走っていて水のせせらぎを耳にしたとき——。
それらが、まるでスイッチが強制的にONになったように膀胱に刺激を与えるのです。
「またか」と思いながらも、尿意に抗うことができず、すぐさまトイレに駆け込むか、違うことに集中し尿意への意識を散らすように心がけます。
訪問看護師としての“トイレ戦略”
私は訪問看護師として働いており、一度ステーションを出ると半日から一日中戻れない日もあります。
そのため、外出時は“トイレの確保”が切実な問題です。
普段利用するのは、ドラッグストアやホームセンター、スーパーなど、比較的トイレが開放されており、入口付近に設置されている場所です。
訪問ルートに合わせて、あらかじめどこでトイレを使えるかを想定し、頭の中でルートを調整しています。
一方、コンビニは「商品を買わなければ」という意識が強く、緊急時以外は避けています。
とはいえ、普段から買い物で利用している店舗に関しては、「今回はお借りするだけで失礼します」という思いを胸に、利用させていただくこともあります。
水分摂取についても、注意が必要です。
一度に多くを飲まず、2口程度ずつをこまめに摂るよう心がけています。
1日の目安としては、8時間で約1000mlを目指していますが、やや脱水傾向にあることは否めません。
精神的にも追い詰められる“尿意トリガー”
排尿後に手を洗っている最中に、再び尿意を感じる——そんなことも日常茶飯事です。
ギリギリのタイミングでトイレに駆け込むことも多く、精神的にも非常に疲労を感じます。
「水の音がトリガー」「シャワーの介助が負担に感じる」——これらは以前の自分にはなかった感情です。

水分制限と医療者としてのジレンマ
医療者として、膀胱炎の症状がある際は「水分を多めに摂取し、排尿によって菌を洗い流しましょう」と患者さんにはお伝えします。
しかし実際、自分がその立場になると、その指導内容を実践することの難しさを痛感します。
訪問先にはトイレがあるとはいえ、利用者様のトイレをお借りするわけにはいきません。
業種を問わず、業務中に自由にトイレに行けない方は多くいらっしゃると思います。
そうなると、尿意を感じる前提で水分を控えることになり、結果として脱水傾向を招く——。
これこそまさに、医療者としてのジレンマと言えるでしょう。
便座に座りながら下腹部を手で押し、できる限り尿を出し切ろうとしますが、完全に出し切った感覚は得られません。
その結果、残尿感が常にあり、「いつまた来るか分からない不安」が常につきまとうようになりました。
看護師としての私の指導は正しいのですが、お仕事のことを考えると実際の生活や環境では水分を摂ることが難しい時もあります。わたしも実際に経験してみてよくわかりました!

💬 膀胱炎には水分摂取がセオリー
排尿によって細菌を排出するため
膀胱炎は多くの場合、大腸菌などの細菌が尿道から膀胱に侵入して起こります。水分をしっかり摂ることで排尿回数を増やし、膀胱内の細菌や炎症性物質を洗い流す効果が期待されます。
尿の濃縮を避けるため
脱水や水分不足があると尿が濃くなり、膀胱粘膜を刺激して痛みが強くなることがあります。十分な水分で尿を薄く保つことは、痛みの緩和にもつながるとされています。
**日本泌尿器科学会の診療ガイドライン(急性単純性膀胱炎)では、抗菌薬の使用に加え、「十分な水分摂取による排尿促進」**が補助療法として記載されています。
国際的にも、米国メイヨークリニックやCochrane Libraryなどの情報源で、「hydration(十分な水分補給)」が推奨されています。
この体験から伝えたいこと
頻尿や切迫性尿意は、なかなか人に話しづらいものです。
「トイレが近いだけ」と受け取られることも少なくありません。
けれど、それは仕事や生活の質、精神面にまで影響を及ぼす深刻な問題です。
同じような症状に悩んでいる方がいたら、この頻尿や膀胱の痛み、排尿時の痛み、灼熱感に強く共感してもらえると思います。
今回のように、BCG治療後に膀胱の違和感や排尿時の痛みが現れた場合には、
早めに泌尿器科を受診することが重要です。
膀胱炎やその他の排尿障害が隠れている可能性もあり、適切な診断と治療が必要です。
特に、抗菌薬の内服や、水分をしっかり摂ることで膀胱内の細菌を洗い流すことが、
症状を和らげ、再発を防ぐ基本的な対処法となります。
私自身も、症状が改善しない現状をふまえ、泌尿器科を受診する予定です。
体の声に耳を傾け、早めに対処することが何より大切だと、今回改めて実感しました。