体からのSOSに気づいて!
がん治療の経過や副作用は人によって大きく違います。
倦怠感(だるさ)や吐き気、痛みなどは多くの方が経験しやすい症状で、日常の中でも比較的気づきやすい変化でしょう。
けれど、看護師として多くの患者さんを見てきた私は思います。
「もっと小さなサインに早く気づけたら、体を守れるのに」と。
実際、私自身もその「小さなサイン」に助けられました。
右の背中に続いた鈍い痛みと、叩いた時の鋭い痛み——。
普通なら「腰痛かな?」「神経痛かな?」と流してしまったかもしれません。
でも看護師の視点で「腎臓に異常があるかもしれない」と気づき、病院を受診。
その後、血尿が出て尿管がんと診断されました。
また、知人から「乳首から血が出ている」と相談を受けたときも、すぐに婦人科の受診を勧めたところ、乳がんが見つかりました。
このように、一般の方が見落としがちな小さな変化が、病気の大きなサインであることは少なくありません。
だからこそ、このブログを「知識のフック」として役立てていただきたいのです。
今回は、がん患者さんだからこそ意識してほしい 体調の小さな変化に気づくための7つのチェックポイント をご紹介します。
あなたの毎日のセルフチェックが、未来の安心につながるかもしれません。
チェックポイント①:痛み
「痛み」は、体からの最もわかりやすいSOSです。
けれど私たちは「ちょっと疲れたからかな」「薬を飲めば大丈夫」と軽視してしまいがちです。
私の場合、背中側の右肋骨の下に持続的な痛みがありました。さらに足のむくみと体重増加も重なって「もしかしたら…」と40%ほど疑いましたが、その後血尿が出て確信へと変わりました。
🔍 痛みチェックのポイント
- 部位:どこが痛むのか(限局的か、広範囲か)
- 強さ:0(なし)〜10(最大)の数値で表す
- 性質:「ズキズキ」「鈍い」「締め付ける」「刺すような」など表現
- 持続時間:いつから、どのくらい続くのか
- 日常生活への影響:食事や睡眠に支障はあるか
痛みを「数値化」して医療者に伝えるだけで、診断や対応のスピードは格段に上がります。
👉 「たかが痛み」と思わず、「体が出している大事なメッセージ」と受け止めてください。

チェックポイント②:食欲・摂食状態
命をつなぐために欠かせない食事。だからこそ、その変化は体調の異常を教えてくれるサインです。
私も抗がん剤治療をしている患者さんに、「最近お水がおいしく感じなくてね」と相談を受けたとき、抗がん剤による味覚障害が出てきたなとピンっときました。
食欲チェックのポイント
- 味の感じ方の変化(味がしない、苦く感じるなど)
- 口の状態(乾燥・口内炎)
- 食事量(普段の半分以下になっていないか)
- 便通(慢性的な便秘も食欲低下につながる)
- 持続性(一時的?数日続く?)
👉 「たまたま食べたくない日」と「数日続く食欲不振」は大きな違いです。

チェックポイント③:吐き気
吐き気は本来、体を守るための反応です。
でも抗がん剤による吐き気は違います。脳の嘔吐中枢が刺激され、必要な栄養や水分までも受けつけなくなってしまいます。
私が看護の現場で見てきて「食べやすかった」と患者さんに好評だったのは、プリンやアイスクリーム、ゼリー飲料。
のど越しがよく、においが少なく、しかも栄養価が高い。調子が良いときにすぐ摂取でき、カロリーが表示されているから目安にもなります。
吐き気チェックのポイント
- いつ起きる?(食後、空腹時、においで?)
- 程度は?(ムカムカ〜嘔吐まで)
- 頻度は?(毎日か、週数回か)
- 水分は摂れているか?(尿量や尿の色もチェック)
👉 吐き気は「よくある副作用」と片付けず、「昨日より食べられなかった」など小さな変化を医療者に伝えましょう。

チェックポイント④:呼吸の変化
呼吸の変化は少しずつ進行するため、気づきにくい症状です。
胸水がたまると、階段を上るだけで息苦しさを感じるようになります。
私は下腹部の手術後、痛みで腹式呼吸ができず、普段15回だった呼吸数が22回に増えてしまいました。
「呼吸の深さ」と「回数」は病気だけでなく痛みの影響も大きく受けるのです。
呼吸チェックのポイント
- 安静時呼吸数:成人の目安は15回/分前後
- 20回/分以上なら注意
- 浅い呼吸、肩で息をしている
- 会話が続かず息継ぎが増える
- 横になると苦しい(起座呼吸)
- 唇や爪の色が紫っぽい(チアノーゼ)
👉 「普段の自分の呼吸数」を知っておくことが、異常に早く気づく第一歩です。

チェックポイント⑤:むくみ
むくみは血流や水分代謝が滞っているサインです。
下肢は重力でむくみやすいため、特に観察ポイントになります。
私自身、右腎臓を摘出して以来、むくみが出やすくなりました。
疲れた日には靴下の跡がくっきり足首に残り、「やっぱり浮腫んでいたんだ」と気づきます。
むくみチェックのポイント
- 左右差(片足だけむくむのは血栓の可能性も)
- 時間帯(朝は軽いのに夕方強くなる)
- 圧痕(指で押して跡が残るか)
- 靴下の跡が深いかどうか
- 体重の急増(数日で+2kgなら水分貯留を疑う)
👉 「疲れたからかな?」で済ませず、毎日の習慣でチェックしてみてください。

チェックポイント⑥:体重の増減
体重は最も身近で信頼できる健康のバロメーターです。
急な体重増加
- 浮腫による水分貯留の可能性
- 数日で2kg以上増加+倦怠感や息切れがあると要注意
私も腎臓が悪化したとき、むくみと同時に体重が2kg増えていました。食欲は変わらなかったのに。これは体内に水分がたまっていたサインでした。
急な体重減少
- 食欲不振や摂取不足
- 甲状腺機能亢進症など代謝の病気
- 消化器系の不調(吸収不良や慢性下痢)
👉 毎日でなくても、週に1回は同じ条件で測る習慣をつけてみてください。

チェックポイント⑦:疲労感・集中力の変化
疲労感や倦怠感は数値化しにくく、曖昧な表現になりがちです。
でも、「普段の自分」との違いを感じることが大切です。
- 体が重い、動きが鈍い
- 眠気が強い、寝ても疲れが取れない
- 集中できない、ミスが増える
- 肩こり、頭重感、視力の低下
私も、尿管がんが見つかる前、今思えば「だるさ」があったのかもしれません。
しかし当時は経営に追われ、スタッフや利用者を守ることに必死で、自分の体の声に耳を傾けられませんでした。
あのとき気づけていれば、もっと早く病院に行けたかもしれないと今は思います。
👉 「なんとなくおかしい」は立派なサイン。見逃さず、体を守る行動につなげましょう。

体の小さなサインを見逃さないために
がん治療中の体は、とてもデリケートで繊細です。
今回お伝えした 7つのチェックポイント は、どれも日常生活の中で気づける小さな変化です。
- 痛み —— 部位・強さ・性質・持続時間を意識する
- 食欲・摂食状態 —— 味の変化や食事量を見逃さない
- 吐き気 —— タイミングや程度をチェックし、食べやすい工夫をする
- 呼吸の変化 —— 普段の呼吸数を把握し、浅さや息切れに注意する
- むくみ —— 足首や靴下の跡、左右差を確認する
- 体重の増減 —— 週に1回は測定し、数字の変化を記録する
- 疲労感・集中力の変化 —— 「なんとなくおかしい」を軽く見ない
これらは特別な機器や技術を必要とせず、「普段の自分を知っておくこと」から始められます。
だからこそ、明日からでもすぐに取り組めるチェックばかりです。
行動への一歩
・寝る前に靴下の跡を見てみる
・朝起きたら体重を測る
・今日は疲れが取れているかどうか、メモする
ほんの1分でできる習慣が、未来の安心につながります。

あなたへ問いかけ
がんとともに生きる日々は、不安も多く、体の変化に敏感になりすぎてしまうこともあります。
でも、だからこそ「気づける力」を味方につけてほしいのです。
👉 あなたは今日、どんなサインに気づきましたか?
👉 明日から、どのチェックを生活に取り入れますか?
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