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がん患者として看護師をやるということ

この記事を書いた人:くるみん

がんサバイバー×看護師。療養と生活のリアルを発信中。
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〜二つの視点をもった私が伝えたいこと〜

導入

「がんを経験する前の私は、患者さんの気持ちをわかっていたつもりだった」

私は25年間、看護師として多くの患者さんと向き合ってきました。特にがん患者さんとの関わりは深く、「寄り添うこと」「話を聞くこと」「支えること」を大切にしてきたつもりでした。

でも実際に、自分が“がん患者”になって初めて気づいたのです。 「わかっていたつもり」は、「わかっていなかった」のだと。

がん患者であり、看護師である今の私だからこそ、伝えられることがあります。


🩺 看護師として、がん患者さんに寄り添ってきた日々

私は主に外科での経験が長く、消化器外科の患者さんたちを多く担当してきました。手術が前提の患者さんが多かったため、手術への不安はありつつも、比較的前向きな方が多かった印象です。

その後、内科では化学療法を受ける患者さんに関わり、抗がん剤の副作用や不安への対応を学びました。ここ3年は訪問看護師として、ご自宅での看取りを何件も経験してきました。薄れていく意識の中で、患者さんは何を感じているのか。自宅で最期を迎えるということは本当に幸せなのか。ご本人だけでなく、ご家族の不安や戸惑いにも目を向けながら学んできました。

患者さんへの説明では、医師の言葉が難しかったり淡泊だったりすることもあるため、私はその補足や通訳のような役割を担っていました。明るく接しつつ、必要に応じて傾聴に徹する。そうやって「気持ちに寄り添っていた」と思っていました。


🧬 「あなたも、がんです」…患者になった私

ある日、私はクリニックで造影CTの結果説明を受け、「かなりの確率でがん」と告げられました。 看護師として自分の症状やリスクは把握していたつもりでしたが、医師と一緒に画像を見ながら説明を受けたとき、のどがカラカラになるほどの衝撃を受けました。さらに検査を進め、確定診断が出たときには、「もう後戻りできない」「私はがん患者になってしまった」と、人生が一変した気がしました。

私が告知されたのは、リンチ症候群という遺伝的要因があるタイプのがんでした。長年、大腸や胃の検査を毎年受けてきたのに、まさか泌尿器系のがんになるとは——。

医師からは「がんのスイッチが入ってしまった」と言われ、その言葉が頭から離れませんでした。

術後の痛みや化学療法の副作用、終末期に向かう恐怖——。 私は看護師として知識があるからこそ、自分の未来が手に取るように想像できてしまい、それが恐怖に変わりました。ある意味、知らない方が幸せだったかもしれない。そう思うこともありました。


🔁 看護師と患者、2つの視点が重なった瞬間

がん患者になって初めて、「言葉ではなく態度が支えになる」ということを実感しました。 安易な励ましの言葉よりも、そばにいてくれる、気にかけてくれている——その“存在”こそが救いになるのです。

何度も足を運んでくれた方。何気ない話題で笑わせてくれた方。 そんな「気持ちを向けてくれる人たち」が、どれだけ私の心を軽くしてくれたか。

看護師だった頃、私が関わってきた患者さんたちも、同じような気持ちで入院生活を送っていたのかもしれない。がんを告知され、手術を待つあの時間、きっとたくさんの不安が頭をよぎっていたのだろう——。


💭 がんを経験して、看護が変わった

今、私は看護師として現場に戻っています。 がんという病を抱えながら、治療を受けながら働く毎日。

「がん患者である看護師」としての私の姿が、誰かの希望になるかもしれない。

これからは、無理に励まさず、否定もせず、相手のペースを尊重して寄り添う看護をしていきたい。

非言語的なコミュニケーション——タッチング、うなずき、表情。 それこそが「支える」ということだと、今は心から思います。


🌱 これから目指す、心に寄り添う看護師像

がんを経験したことで、私の看護は大きく変わりました。 そしてこれからも、変わり続けていくのだと思います。

「一緒に頑張ろう」 「頑張らないという選択も、あなたの大切な決断だよ」

そう言える看護師でありたい。 そして、「あなたは一人じゃない」と、そっと伝えられる存在でありたい。

がん患者として、看護師として——。 私は、これからも誰かのそばにいたいと思っています。

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