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がんで見えた「本当に大切な人」|人間関係を“再編集”するという選択

この記事を書いた人:くるみん

がんサバイバー×看護師。療養と生活のリアルを発信中。
「前を向きたい人の、灯りになれるブログ」を目指しています。

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がんになって「よかった」
がんになって「よかった」なんて、私はやっぱり言えません。

抗がん剤の副作用、繰り返す検査、不安な夜…そんな中で、心も体もすり減って、「なんで私が」と何度も思いました。

でもそれでも、がんになったからこそ見えた世界があります。

それは、がんにならなければきっと気づけなかった——
自分自身のこと、家族のこと、人とのつながり、生きるということの重み。

このシリーズでは、「がんを経験したからこそ感じた10の気づき」を、ひとつずつ丁寧に綴っていきたいと思います。

無理に前向きにならなくてもいい。
でも、もし心のどこかで「何かを感じてくれた」なら、それはきっと、同じように闘っている誰かの光になると信じています。

「がんを経験したからこそ感じた10の気づき」第2回は、「大切な人の再発見」についてお話しします。

第2回 がんで見えた「本当に大切な人」|人間関係を“再編集”するという選択

※これは、あなた自身の物語かもしれません※
がんという出来事を通して、私は人との関係を見直すようになりました。ですが、これは決して特別なことではなく、誰にでも起こり得る「人生の再編集」のきっかけです。この記事を読むあなたも、ふと顔が浮かぶ“あの人”がいるのではないでしょうか。


第1章:がんが照らし出した人間関係の“輪郭”

がんと診断された瞬間から、私は人との関わりを見直すようになりました。電話帳には何百もの連絡先、LINEには見覚えのないアカウントが並んでいて、これからの人生で本当に連絡を取る相手はどれだけいるだろうか——そんな問いが浮かびました。

残りの人生が限られていると感じたとき、「もう連絡を取らないだろうな」と思う人たちの存在が、急に重たく感じたのです。人間関係の“掃除”というと少し乱暴に聞こえるかもしれません。でも、今の自分にとって本当に大切な人、自分にストレスを与えない人、心地よく過ごせる人たちとのつながりを大切にしたい——そう思ったのです。

がんになったことで、自分の弱さをさらけ出さざるを得なくなりました。そんな姿を無条件で受け入れてくれたのが、妻であり、子どもたちであり、母でした。彼らは、がんを告げたそのときから、何も言わずに私の隣にいてくれました。


第2章:“触れたい”という感情が教えてくれたこと

50歳を目前にがんと診断され、僕は少し変わったかもしれません。手術や免疫療法を経験する中で、妻に触れようと試みています。毎日、何度も何度も。ただそこにいてくれることを確認するように、触れずにはいられなかった。

素直「うっとうしい」と思われています。それでも、確かに“生きている”という感覚がほしかった。触れ合うことで、不安から少しでも解放される気がしていたのです。

思春期の娘たちも、変わらずそばにいてくれます。ときに私のベッドでスマホを見ながらくつろいでいたり、ハグにも応じてくれたり。そんな姿に、心の奥がふわっと温かくなりました。


第3章:人間関係の“再編集”という選択

私は今、電話帳やLINEの連絡先を少しずつ整理しています。連絡を取らなくなった人、もう会うことがないだろう人との繋がりを密かに手放しています。冷たいように思えるかもしれません。でも、残された人生で、本当に会いたい人、大切にしたい人とだけ、丁寧に時間を使いたいのです。

一方で、正直に言うと——整理を進める中で、葛藤や躊躇もありました。

「この人を削除してしまって、本当に後悔しないだろうか?」
「相手はどう思うだろうか?」

そう考えて、画面の前でしばらく手が止まることもあります。

高校時代に仲のよかった友人、以前の職場で何度も助けてもらった同僚。たしかに今は連絡を取っていないけれど、過去の思い出がよみがえると、簡単には“整理”できないのです。

それでも、今の私には「今を一緒に生きてくれる人」が何よりも大切だと感じています。削除するのではなく、「感謝して、そっと置いておく」——そんな感覚で、少しずつ人との距離を見直しているところです。


第4章:あなたにとって“本当に大切な人”は誰ですか?

考えてみてください。
実家の両親と会うのは年に数回、長期休暇だけ——そんな方も多いのではないでしょうか。もし、これから先に会える時間が“20日にも満たない”としたら?
独立した子どもとは、もう数年も会っていない。これから先、あと何回、顔を見て笑い合えるのでしょう。

だからこそ、一緒に過ごせる時間を「当たり前」にしないでほしいのです。
そして、もし久しぶりに会えた友人がいたなら「これが最後かもしれない」——そんな思いで向き合えば、きっとその時間の尊さは変わるはずです。


第5章:がんが教えてくれた“人とのつながり”の意味

健康だった頃、人間関係は無限に広がっていくような気がしていました。仕事仲間、趣味仲間、SNSでのつながり——たくさんの人と出会い、関わることが楽しかった。

でも、がんになった今、見える景色は変わりました。
本当に大切なのは、そばで支えてくれる人、そして気づけばいつもそっと見守ってくれる人。

たとえば、妻がキッチンで料理している姿。母が変わらず子どもとして私を見守ってくれるまなざし。娘たちの何気ないやさしさ。犬のムクマロの変わらない存在感。そして、Xで静かに励ましをくれる“顔の見えないあなた”。

支えてくれる人がいること、それ自体が、生きる力になる。
これからの人生、その絆をもっと太く、温かく育てていきたいと思っています。


最後に

あなたの「今、連絡を取りたい人」は誰ですか?

もしかしたら、ずっと連絡をしていなかった友人かもしれません。
最近ちょっと距離ができた家族かもしれません。
あるいは、すぐそばにいるのに、当たり前になってしまった大切な人かもしれません。

どうか、今日このブログを読み終えたあと、
ひとりだけでいいので「ありがとう」「元気?」のひとことを伝えてみてください。

がんという病をきっかけに見えたこの“再編集された人間関係”は、
きっと、あなたにもかけがえのない“今”を教えてくれるはずです。

👉 シリーズ第1話はこちら
『今日を生きる』が、こんなにも深い言葉だったなんて

がんの告知を受けた日から、時間の流れが変わりました。
未来ばかり見ていた私が、「今日をどう生きるか」しか考えられなくなった——
そんな“止まった時間”の中で見つけた、小さな奇跡の数々を綴りました。

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