がんを経験したことで、私は「命」だけでなく「遺されるもの」についても考えるようになりました。
特に、最近よく耳にする「デジタル遺産」について、自分自身の体験や家族との関係をもとに、少し整理しておきたいと思います。
デジタル資産ってそもそも何?
デジタル資産とは、スマホやパソコン上で管理している財産のこと
。銀行口座や証券口座、仮想通貨、サブスクリプション、アフィリエイト報酬、電子マネーなど、形のないお金も資産です。
これらはIDやパスワードがないと基本的にアクセスできず、家族でも簡単に引き継ぐことはできません。
私の母と”見えないお金”の話
私の母はがんサバイバーで、複数のがんと共に生きています。
父は7年前に他界し、母は私の自宅近くのアパートで一人暮らしをしています。
そんな母ですが、複数の銀行口座を持っていて、その情報を私(息子)も知りません。
通帳も印鑑もどこにあるのか分からない。今は元気だから必要ないと思っているようですが、もし急に入院してそのまま…ということになれば、家族として非常に困る状況です。
そのとき思ったんです。「自分だったらどうだろう?」と。
私自身のデジタル終活
私には妻と3人の子どもがいます。
私に万が一のことがあったとき、彼らは私の資産をスムーズに引き継げるのでしょうか?
現代の資産管理はオンライン中心です。
ネットバンク、証券口座、NISAやiDeCo、ブログ収益やアフィリエイト、すべてIDとパスワードが必要です。
さらに、私はいくつかのサブスクリプションにも加入していて、月に1万円以上を支払っています。
これらが自動で引き落とされ続けると、家族が気づかずに無駄な出費が続く恐れもあります。
実際に私の父が生前、競馬情報のサブスクに加入しており、亡くなったあとも数か月引き落とされていたことがありました。
金額にすればわずかでも、積もれば大きなロスです。
実際に起こるデジタル遺産トラブルとは?
ネット銀行の口座凍結による資産凍結
故人がネット銀行で管理していた預金に遺族がアクセスできず、銀行口座が凍結された事例があります。
手続きに時間がかかり、生活費が引き出せず困るケースもあります。
仮想通貨ウォレットのアクセス不能
仮想通貨の秘密鍵を誰にも伝えないまま亡くなってしまうと、資産そのものが取り戻せなくなります。特に管理者がいないため、自己責任での対策が必要です。
SNSアカウントの乗っ取り
放置されたSNSが第三者に乗っ取られ、悪用されるケースもあります。
本人以外の削除申請は手間がかかり、プライバシーや信頼にも影響が出ます。
サブスクの継続課金
動画配信やオンラインストレージなどのサブスクが解約されず、クレジットカードから継続して引き落とされるケースも。
遺族が契約情報を把握していないと、手続きが遅れて損失が広がることもあります。
生きているうちにできる”3つの整理”
私が実践しているのは、次の3つのポイントを押さえた”デジタル資産の終活”です。
1. ログイン情報の整理
すべてのID・パスワードを一元管理できるパスワード管理アプリを活用しています。
ひとつのマスターパスワードを妻と子どもに共有すれば、他の全てのサービスにアクセスできる仕組みです。
2. 資産リストの作成
ネットバンクや証券口座、アフィリエイトの口座などをExcelに簡単にリスト化。
サービス名・登録アドレス・用途を整理しておくことで、どこに何があるのか“見える化”します。
3. 意思表示の共有
最も大切なのは“伝えておくこと”。信頼関係がないとパスワードを伝えるのは難しいものですが、「いつか」でなく「今」共有しておくことで、家族の混乱を防げます。
母の資産管理から学んだこと
今では、母のネット証券とネットバンクの口座は私が把握しています。
もちろん勝手に手を付けることはありませんが、母と相談し「万が一のときのために共有しておこう」と決めました。
最初は母も戸惑っていましたが、遺された家族の混乱を減らせるなら…と納得してくれました。
ステップアップ:今からできること
- パスワード管理アプリの導入:1PasswordやBitwardenなど、使いやすいものを選びましょう。
- 資産の棚卸し:ネット銀行・証券・サブスクの一覧表を作成し、定期的に見直す習慣を。
- 家族との対話を始める:照れくさくても、”万が一”の話をできる関係づくりが第一歩です。

くるみんは1Passwordを導入して一元管理しているよ。
妻に教えようとしたら「まだ早い!」と言われたよ!
あなたの資産はどうやって引き継いでもらえますか?
「自分にはあまり財産がないから関係ない」と思う人もいるかもしれません。
でも、たとえ少額でも、形のないお金が残る今の時代、放置すれば“損失”になることもあります。
残された家族が困らないように。自分の想いを、きちんと形にしておくために。
がんを経験した私だからこそ、「いつかじゃなく、今」備えることの大切さを伝えたいと思います。

あなたのデジタル資産、引き継げる準備、できていますか?