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尿管がんと膀胱がんの関係とは? 再発リスクと“重力”の真実【私の体験から】

この記事を書いた人:くるみん

がんサバイバー×看護師。療養と生活のリアルを発信中。
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はじめに|「まさか自分が…」尿管がんの告知を受けた日

ある日突然、造影CTの結果を告げられた診察室でのひと言——
「尿管がんの疑いがあります」

その瞬間、目の前が真っ白になりました。


医師の声は遠くで響いているようで、何を言われているのかも曖昧なまま、私はただ黙って頷くだけでした。

看護師として働く私にとって、がんという病気は“知っている”存在でした。

けれど、自分の体にそれがあると知ることが、こんなにも心を揺さぶるものだとは思いませんでした。

しかも、診断されたのは「尿管がん」——聞き慣れない、そしてとても珍しいがんでした。


尿管がんとは?|全がんの0.1%、希少な尿路上皮がん

尿管がんと膀胱がんの違いと共通点

尿管がんは全がんのうちわずか約0.1%に過ぎない、非常に稀な疾患です。


100万人のがん患者の中でも、およそ1000人しか診断されないほどの珍しさです。

一方、膀胱がんは年間2万5000人以上が罹患する、比較的多いがんで、尿管がんと同じく「尿路上皮がん」に分類されます。

尿管の構造ががん発生を防いでいる?

尿管は、腎臓から膀胱へ尿を運ぶ、直径数ミリ・長さ約25~30cmの細長い管です。


この狭さと形状が、がんの発生頻度の低さに関係していると言われています。

しかし、一度がんが発生すると進行が早く、診断が遅れやすいのも特徴です。

私自身も、半年前の腹部貯音波検査では問題がなかった後、突然の血尿が確認できました。

造影CTの結果は2.5cmほどの腫瘍が尿管を取り囲んでいました。自覚症状は血尿以外何もありませんでした。


がんはどうやって広がる?|5つの基本パターン

私が医師から説明された「がんの広がり方」は以下の5つでした。

代表的な転移・浸潤パターン

  • リンパ節転移:がん細胞がリンパ管を介して体内を巡り、別の部位に移動するパターンです。リンパ節転移は、多くのがんで最初に確認される転移形式の一つです。
  • 血行性転移:血液を介してがん細胞が運ばれるケースで、肺や肝臓といった血流の多い臓器に転移しやすい傾向があります。
  • 遠隔転移:がんが原発部位から離れた臓器や組織に広がる状態です。乳がんの遠隔転移では骨や肺が典型的な転移先とされています。
  • 腹膜播種:胃や大腸などを覆う薄い膜「腹膜」にがん細胞が散らばり、そこに定着して増殖する現象です。進行がんでよく見られる形式の一つです。
  • 局所浸潤:がんが周囲の健康な組織を侵しながら拡大するタイプです。たとえば胃がんが胃壁を越えて周辺臓器に広がる場合がこれに該当します。

尿管がんで注意したい再発の形

なかでも私が驚いたのが、「術後に膀胱がんとして再発するリスクがある」という事実です。
なんと、尿管がん患者の15~50%が術後に膀胱がんを再発すると言われているのです。


なぜ膀胱がんが再発しやすいのか?|“重力”と尿の流れがカギ

私が医師から聞いて特に印象に残ったのが、「重力」というキーワードでした。

尿は、腎臓 → 腎盂 → 尿管 → 膀胱という順で流れていきます。


この流れに乗って、尿管にいたがん細胞が膀胱に落ちていき、膀胱内で定着・増殖して再発する——これが、膀胱がんの再発率が高い理由の一つとされています。

逆流しない構造のため「膀胱 → 尿管」は稀

逆に、膀胱がんから尿管にがん細胞が逆流することはほとんどありません。


これは尿の流れが一方向だからこそ。

とはいえ、尿管・膀胱・腎盂はいずれも同じ「尿路上皮細胞」から成るため、どこかでがんが生じると、他にもリスクが波及します。


私のステージは「Ⅲ」でした|診断を受けたときのこと

私の尿管がんは「ステージⅢ」と診断されました。


腫瘍が尿管の外にまで及んでいるものの、遠隔転移は確認されていない段階です。

ただし、CT画像では肺に小さな炎症の影が映っていて、完全に安心とは言えませんでした。


「これは転移じゃないか?」という不安が、しばらく心の奥に居座り続けました。

尿管がんのステージ分類(簡略版)

  • 0期:がんが尿路上皮内にとどまる
  • Ⅰ期:粘膜下層まで浸潤
  • Ⅱ期:筋層に浸潤
  • Ⅲ期:周囲の脂肪組織に浸潤(←私のケース)
  • Ⅳ期:臓器転移・リンパ節転移あり

治療法の違い|尿管がんと膀胱がんの対処法

尿管がんは、がんができた尿管とその腎臓(腎盂)を一緒に摘出する手術が一般的です。


再発や浸潤のリスクを考え、広めに切除する方針が取られることが多いのです。

一方、膀胱がんは早期なら内視鏡での切除(TURBT)が可能で、比較的身体への負担が軽い治療から始められます。


ただし、進行していれば膀胱全摘・尿路再建・人工膀胱など、大がかりな処置が必要になります。


術後の不安と向き合う日々|BCG治療と検査の連続

尿管がんの手術を終えて、次に始まったのがBCG(ウシ型結核菌)膀胱内注入療法でした。


これは、膀胱内に結核菌由来の弱毒化したBCGワクチンを注入し、免疫反応を利用してがん細胞の再発を防ぐ治療法です。


特に膀胱がんの再発率が高いケースでは、世界的にもスタンダードな治療とされています。


副作用も強く、排尿痛や倦怠感に悩まされながらも、「これが再発を防ぐための戦いなんだ」と自分に言い聞かせながら通院しています。

治療は6~8回が1サイクルで膀胱鏡にて確認しながら、次の治療の判断をするそうです。

再発を防ぐために私が意識していること

  • 定期検査の継続(膀胱鏡・CTなど
    症状が出にくいのが尿路系がんの特徴です。再発は無症状で進行することも多いため、定期検査と報告が鍵になります。
  • 十分な水分摂取(1日1.5〜2L以上)
    尿が体内の毒素を排出する働きをする以上、尿の停滞を防ぎ、膀胱内に発がん物質を溜めないことが重要です。
  • 抗酸化・抗炎症を意識した食生
    野菜・果物・魚など、抗酸化作用を持つ食品を意識して取り入れることで、細胞のダメージを減らし、慢性的な炎症を抑えることができます。
  • 定期的な運動・適正体重の維持
    適度な運動は免疫力を高め、炎症を抑え、インスリン抵抗性の改善にもつながります。
    過体重や内臓脂肪の増加は、がん再発のリスク要因となることがあります。

おわりに|“稀な病気”は、孤独な戦いになりやすい

尿管がんという希少ながんは、情報も少なく、周囲に同じ病気の人がいないことも多いです。


「自分だけが取り残されたような気持ち」になる瞬間もありました。

でも、今こうしてブログを書くことによって、「誰かにとっての道しるべ」になるかもしれない。


そう思うことで、少しだけ前を向くことができています。

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