はじめに
車って、調子が悪くなったら修理して、どうしようもなければ買い替えることができます。
でも、私たちの「体」はどうでしょうか?
事故車のように取り替えることもできなければ、気軽に部品交換もできません。
私たちに与えられた体は、生涯ずっと乗り続ける“たった一台きりの車”なんです。
私はがんと診断された日から、初めて本気でその「乗り物」と向き合うようになりました。
それまでは、ただひたすら走ることばかり考えていて、オイル交換(栄養補給)もせず、車検(健康診断)もスルーし、メンテナンスも怠ったまま、過走行状態でアクセルを踏み続けていたんです。
今振り返ると、こう思います。 「それ、いつかエンストするに決まってるじゃん」って。
体は“乗り換えられない車”。だからこそ、点検が必要
人間の体って、機械のようでいて、とても繊細。 私はよく「体は車と同じ」と考えるようになりました。
エンジンは心臓、タイヤは足腰、バッテリーは心の元気、そしてハンドルは心の状態。エンストする前には、必ずどこかに異変が起きているものです。
オイル交換にあたるのが、日々の食事や栄養。
車検にあたるのが、健康診断や人間ドック。 そして、安全運転は、私たちの日々の生活習慣。
どれか一つでも手を抜いたら、やがて体は悲鳴を上げて止まってしまいます。
でも私は、その警告灯にも気づかずに走り続けていました。
あなたの生活習慣、今どこかに“赤いランプ”がついていませんか? 一度、立ち止まって点検してみませんか?
がんになる前の私は、アクセル全開の“過走行車”だった
当時の私は、訪問看護ステーションの経営者でした。
朝起きてから夜寝るまで、頭の中は常に仕事。休日も関係なし。
寝ている時間以外は、職員のこと、利用者さんのこと、資金繰り、トラブル対応に追われていました。
心に余裕がなくなると、食生活にも乱れが出ます。
ご飯が大好きで、白米にマヨネーズをかけて食べるなんてこともありました。
野菜不足も当たり前、食べてもマヨネーズたっぷり!
間食も多く、カロリーや栄養バランスなんて一切気にしていませんでした。
運動はまったくしておらず、体重は増え続け、「脂肪肝ですね」と医師に言われてもピンとこない。
さらに、仕事のために睡眠時間を削るのが常態化。
心も体も疲れ切っているのに、“止まる”という選択肢がありませんでした。
今思えば、あの頃の私は完全に「メンテナンス不良の過走行車」。
そんな私の体が限界を迎えるのは、時間の問題だったのです。

メンテナンスを始めて、体との向き合い方が変わった
がんの診断を受けたことは、私にとって人生の大きなブレーキでした。
でも同時に、それは「もう一度、安全運転に切り替えよう」という合図でもあったのです。
運動という日常点検
毎朝のラジオ体操を習慣にしたことで、体のちょっとした変化に気づけるようになりました。
「今日は肩が重いな」「足が動きにくいな」——そうしたサインを、見逃さなくなったんです。
さらに、毎日の4キロランニングとYouTubeでの腹筋トレーニングも継続中。
単に痩せるための運動ではなく、体と“会話”するための時間になっています。
食事というエンジンオイル
食べる順番も見直しました。
まずは野菜から食べ、次にタンパク質、最後に糖質を少量。
血糖値の上昇を緩やかにし、体に負担をかけない食べ方を意識しています。
毎日の献立も「体が喜ぶかどうか」を基準に選ぶようになり、以前のような暴食・偏食は自然と減っていきました。

睡眠という充電
十分な睡眠時間が取れない日もあります。
でも今は、「短くても質を高く」という意識で工夫をしています。
夜はカフェインを控え、お風呂で体をしっかり温めてリラックスしてから眠る。
体を“充電”する時間は、次の日のパフォーマンスを決める大事な整備ポイントです。
心のハンドル操作
心の健康も、私にとっては重要なメンテナンス対象です。
嫌なことを無理に続けない。
嫌いな人と無理に付き合わない。 逃げることは、悪ではない。
今の私は、「嫌なことを手放す勇気」が、“命を守るハンドル操作”だと信じています。
定期点検と遺伝子診断という“リコール対応”
車には2年に一度、車検がありますよね。
これを受けておけば、ブレーキの故障やエンジンの異常に早く気づけます。
人間の体にも、それと同じくらい大切な“車検”がある。 それが、定期的な健康診断や人間ドックです。
私はリンチ症候群という、遺伝的にがんになりやすい体質でした。 言い換えれば、これは「生まれつきの構造上の欠陥」。
車で言えば、走行中に重大事故につながる“リコール対象”だったのかもしれません。
でも、それに気づかず走り続け、ある日突然、エンジンが止まった——それが、私のがん体験でした。
過去に遺伝子診断という「初期点検」を受けていたのですが、整備する箇所が異なっていたため、がんになってしまいました。
しかし、定期メンテは行ってたので手術ができ免疫治療だけで済んでいるかもしれません。
だけど、リコール対象に気づけるはずの検査があるにもかかわらず、知らずに走っていたら…。
いずれはは止まってしまうか事故を起こしてしまいますよね。
だからこそ私は、自分の体と、同じように走り続けている誰かの体を、守ってほしいと思うのです。
「今は元気だから大丈夫」と思っていませんか? 本当に安心するために、“今”のうちにできること、ありますよ。
おわりに——あなたの体は、何万キロ走っていますか?
あなたの体にも、きっとこれまで走ってきた距離があります。
頑張った日々、無理をした日々、泣いた日、笑った日——すべてを乗せて走ってきた“あなたという車”。
これからも走り続けるために、どうか今こそ点検してあげてください。
健康診断の予約をするでもいい。 今日の夕食を野菜から食べてみるでもいい。 明日の朝、ラジオ体操をしてみるでもいい。
あなたのその“小さなメンテナンス”が、未来の大事故を防ぐかもしれません。
そして何より、それは「自分を大切にする」という、最高の自己肯定なのだと、私は思います。