⚠️本記事は、看護師としての知識と体験をもとに一般的な情報をわかりやすくご紹介するものであり、医師の診断・治療に代わるものではありません。体調や症状に不安のある方は、必ず医師・薬剤師などの医療専門職にご相談ください。
大人だって、座薬を使うことがあるんです
私は、座薬を使うことにまったく抵抗がありません。たぶん、それは看護師として多くの現場を見てきたから。
けれど、ふと考えてみたんです。一般の方にとって座薬って、ちょっと「抵抗があるもの」かもしれないなって。
実際、市販薬としては子ども用の座薬はよく見かけますが、大人用の座薬ってあまり目にしませんよね。
基本的には医師の処方がないと手に入らないため、「いざ使う」となっても戸惑ってしまう方も少なくないと思います。
病院では、薬剤師さんが薬の説明をする機会はありますが、座薬の使用方法について丁寧に解説してもらえる場面は意外と少ないのが現状です。
そこで今回は、看護師としての視点から、大人が座薬を使うときのちょっとした知識やコツを、わかりやすくご紹介したいと思います。
【そもそも座薬って?】飲めないときの“頼れる選択肢”
座薬は「直腸から薬を吸収させる」タイプの医薬品で、経口投与が難しいときの“強い味方”です。
たとえば、吐き気や嘔吐がひどくて薬を飲んでもすぐに戻してしまうとき。
あるいは高熱で水分も摂れず、薬が飲めないとき。
こういった状況では、口から薬を入れるという選択肢がそもそも難しいことがありますよね。
そんなとき、座薬はダイレクトに腸から吸収されるため、内服よりも速やかに効果が現れるというメリットがあります。
特に解熱鎮痛薬では、15分〜30分程度で効果が出ることもあるため、整形外科ではぎっくり腰などの急性疼痛に対してもよく処方されます。
さらに、内服薬との飲み合わせが複雑なときに、「経路を変えて座薬にする」ことでリスクを減らすケースもあります。
胃腸に負担をかけたくない場合にも有効です。
また、座薬は“子ども用”というイメージを持たれがちですが、実は大人にも非常に役立つ投与手段のひとつ。きちんとした知識を持てば、必要な場面で心強い選択肢になります。
【使う前に知っておきたい!大人の座薬 使用時の注意点】
座薬は便利で即効性のあるお薬ですが、正しい使い方を知っておかないと効果が半減してしまうことも。
以下のポイントを押さえて、安全にしっかり効果がでるようにしてみてください。
1. 排便はできるだけ先に済ませておく
座薬は直腸の粘膜から吸収されるため、肛門に便が残っていると十分な効果が得られにくくなります。
また、座薬そのものが刺激となって便意を誘発するため、せっかく入れた薬がすぐに出てしまうことも…。
可能であれば、事前にトイレを済ませておくのがベストです。
2. 肛門に対して“まっすぐに”挿入を
座薬は先がとがっていて、後ろが少し平たくなっている形状です。
これは、肛門括約筋を越えると自然に奥へと進みやすくなるように設計されているから。
使い方はシンプルです:
- 座薬を少し湿らせて(またはワセリン・オリーブオイル等を使って)、人差し指か中指で肛門に対して垂直にゆっくりと挿入
- 第一関節が入る程度まで押し込めばOK
- 挿入後は、横向きになってしばらく安静に
この体勢を10〜15分キープすると、体温で薬が溶け、しっかり吸収されやすくなります。
3. 便意は…できれば“我慢”!
座薬を入れると、どうしても「トイレに行きたい」感覚が出てきます。
これはごく自然な反応なので、「効いている証拠だ」と思ってなるべく我慢してみてください。
すぐにトイレに行ってしまうと、吸収される前に出てしまうことがあります。
4. 水分はしっかりと
これはあまり知られていないのですが、座薬使用中も水分摂取は重要です。
脱水状態では粘膜の吸収力が落ちることがあるため、コップ1杯程度の水を飲んでおくと体調も整いやすくなります。
【座薬の素朴なギモンQ&A】
Q1. 座薬ってどれくらいで効くの?
→ A. 一般的には、挿入してから15分〜30分ほどで効果を感じ始めることが多いです。
特に解熱剤や鎮痛剤では即効性が期待されます。
ただし、個人差や薬剤によって差がありますので、「効かない」と焦る前に少し時間をおいてみてください。
Q2. 入れた座薬がすぐに出てきてしまったら、もう一度入れていい?
→ A. 基本的に、座薬の一部が出てしまっても、効果はある程度期待できます。
ただ、完全に未溶解のまま排出された場合は再投与を検討する必要があります。
その際は自己判断せず、必ず医師や薬剤師に相談を。過剰投与のリスクを避けるためにも、確認が大切です。
Q3. 座薬は冷蔵庫に入れておいた方がいいの?
→ A. 多くの座薬は**常温保存(25℃以下)**で問題ありませんが、夏場や室温が高くなる場所では冷蔵保存が推奨されることもあります。
形が崩れると使いづらくなってしまうので、保存方法は薬の説明書に従うのが基本です。
Q4. 子供の座薬はよくあるけど、大人の市販品はなぜ少ないの?
→ A. 座薬は大人になると使用頻度が減るため、市販薬としては需要が少なく、製薬会社が製品化していないのが現状です。
また、大人の座薬は医師の判断が必要なケースが多く、自己判断での使用を避ける意図もあります。
【こんなときには座薬が便利!】
「座薬=子ども用の薬」というイメージ、まだまだ根強いですよね。
でも実は、大人にとっても、ここぞ!という場面で頼れる選択肢なんです。
例えばこんなとき——
■ 吐き気で薬が飲めないとき
インフルエンザや食中毒などで嘔吐がひどく、内服薬を飲んでもすぐに戻してしまう…
そんなとき、座薬なら腸で吸収するため確実に薬効を届けることができます。
■ 即効性を求めたいとき
ぎっくり腰などの急な激痛。整形外科では痛みのコントロールを座薬で始めるケースも多いです。
坐薬は直腸から吸収されるので、内服よりも効果が早く出やすいのが特徴です。
■ 水分が摂れない・食事がとれないとき
高熱や体調不良で水も食事も摂れない場合、薬を飲むのがつらいですよね。
そんなときでも、座薬なら確実に投薬ができる手段として役立ちます。
■ 飲み合わせに配慮したいとき
すでに服用中の薬が多く、「これ以上飲み薬を増やしたくない」「飲み合わせが気になる」という方にも、投与経路が異なる座薬は有効な選択肢になる場合があります。
■ 就寝中の痛み・熱に備えたいとき
夜中に熱や痛みで目が覚めるのがつらい方には、就寝前に座薬を使うことで、夜間を安定して過ごせることもあります。
とくに発熱時など、睡眠の質を下げたくない場合におすすめです。
このように、座薬は決して“最後の手段”ではありません。
場面に応じて上手に使えば、とても心強い味方になるんです。
【最後に:座薬使用にあたっての大切な注意点】
座薬は、飲み薬が使えないときの強い味方。でもその反面、「家にあったから」「以前使って大丈夫だったから」といった自己判断での使用はとても危険です。
座薬にはさまざまな成分があり、それぞれ効果や使用目的、副作用のリスクも異なります。
たとえば、解熱鎮痛剤として有名なボルタレン座薬も、胃腸に負担をかける成分が含まれており、腎機能に不安がある方には禁忌となることも。
体質や病状によっては、副作用やアレルギー反応が出る可能性もあります。
だからこそ、「この症状にはこの座薬でいいだろう」という自己判断は絶対に避けてください。
座薬を使用する際は、必ず医師や薬剤師と相談のうえ、正しい薬を、正しいタイミングで、正しい方法で使うことが大切です。
体に直接使うものだからこそ、より慎重に。正しく使って、安全に効果を得ましょう。
※このブログに記載された内容は、あくまで筆者の個人的な体験と医療知識に基づく情報提供です。ご自身の症状や使用する薬剤については、必ず医師または薬剤師と相談のうえ、正しい指示に従ってください。安易な自己判断は思わぬ健康被害を招く可能性があります。