がんに出会った瞬間、未来が“数字”に変わった
私たちは普段、自分の未来を「数字」で考えることはあまりありません。
けれど、がんと向き合ったその瞬間、未来が突如として「5年生存率」という冷たいデータに置き換わりました。
ネットを開けば、がんに関する情報は山ほどあります。
信頼できる医療サイトから、根拠のない噂話まで。
しかも、検索している私たち自身が「恐れ」や「期待」に引っ張られ、ネガティブな情報にどんどん吸い寄せられてしまうのです。
私が「尿管がんの疑い」と向き合い始めたとき、
頭の中は「ステージって何?」「浸潤してたら…?」と疑問だらけでした。
そんな中で見つけた検索キーワードが、私の心を奈落に突き落としました。
それが「尿管がん 5年生存率」でした。
数字が突きつけてくる現実
検索結果に出てきたのは、こんな数字たちでした:
- 表在性がん(浸潤なし):5年生存率85〜100%
- ステージII(筋層浸潤):約65%
- ステージIII(周囲組織浸潤):約54%
- ステージIV(転移あり):わずか12%
当時の私はまだ確定診断前。
でも、CT画像の所見から「筋層を超えている可能性が高い」と言われていました。
——つまり、私の5年生存率は「約54%」。
「えっ、5年後に生きている確率が半分しかないの…?」
頭が真っ白になり、呼吸が浅くなったのを覚えています。
心の中で叫びました。
「まだ富士山に登ってない!ハワイにも妻と行ってない!娘たちはまだ高校生と大学生…!」
そのとき、私の人生が「数字」で切り取られる恐ろしさを、初めて実感しました。
しかも、肺に映った小さな影が、もし転移ならステージIV。
そのときの5年生存率は、たったの12%。
——ほとんど“余命”のように感じてしまったのです。
「5年生存率」が示す本当の意味
「5年生存率」とは、がんと診断された人が、5年後に生存している確率です。
たとえば、85%という数字なら、100人中85人が5年後も生きている、ということ。
でも、ここには重要な落とし穴があります。
それは、「元気に生活しているかどうか」は含まれていないということ。
5年後に生きていても、日常生活がつらい状態かもしれない。
逆に、再発もなく元気に趣味を楽しんでいる人もいるでしょう。
要するに、「5年生存率」はただの平均値。
私たち一人ひとりの人生は、そんな数字ひとつには収まりません。
数字を“人生の設計図”として受け止める
最初は、絶望しか感じませんでした。
でも、ふと気づいたんです。
この「5年生存率」、ただのデータじゃない。
私にとっては、人生の設計図になるヒントなんじゃないかって。
健康な人は、自分の寿命をリアルに考える機会なんてそうそうありません。
でも、がんという病気が、私に「限りある時間」を突きつけてくれた。
5年後の確率が54%。
この数字を見て初めて、「どう生きたいか」を本気で考えるようになったんです。
この数字を“超えてやる”と決めた日から
悲観し続けることは簡単です。
でも、それでは人生がモノクロになってしまう気がした。
だから、私はこの数字を“超えるためにできること”を考えました。
◆ 医療の進歩を信じる
28年、看護師として働いてきました。
その間、治療法の進化を目の当たりにしてきました。
抗がん剤、免疫療法、分子標的薬…5年後には、今では想像できないような選択肢が増えているはずです。
◆ 早期発見を生かす
再発や新たながんの早期発見は、予後に大きく関わります。
「異変を無視しない」それだけで、命は守られることもある。
だからこそ、定期検査は欠かしません。
◆ 今を全力で生きる
娘たちの成長、妻との旅、まだやっていない挑戦。
「今しかできないこと」があるから、毎日を大切にするようになりました。
おわりに——未来は“数字”だけでは決まらない
「5年生存率」は、確かにがん患者にとってひとつの指標です。
でも、それが私たちの“運命”ではありません。
どう受け止めて、どう生きるか。
それこそが、自分だけの“未来”を描く方法なのだと感じます。
私はまだ、やりたいことがたくさんあります。
このブログを書くこともそのひとつ。
同じように不安を抱える誰かに、希望のひとかけらでも届けられたらと思っています。
最後に、こう伝えたいです。
数字に縛られず、 自分だけの物語を描こう。
ポジティブに、一歩ずつ。